第39χ アパートの幽霊を探れ!(後編)B




「これもハズレっスか。なんか拍子抜け過ぎて帰りたくなって来たっス。」

すっかり気が抜けて欠伸をする鳥束くんにつられて、私も小さな欠伸を漏らす。
変に緊張したせいで疲れを感じるし、時間も時間だから眠くて仕方ない。楠雄くんも眠いのか目が閉じかかっている。慌てて揺すってあげればなんと目は開けてくれたが、やはり眠たそうにしている。
早く寝かせてあげたいのだけれど、青年が満足しないし、無理に帰ろうとすれば待ってくれとすがりついて来そうで、簡単には帰れそうにない。一刻も早く最後の幽霊も探し出してサクッと解決してしまおう。

...と、言っても最後の幽霊は何がトリガーで出てくるのかわからないから待つことしかできないのだが。
時間だけか刻々と過ぎて行く。鳥束くんはパソコン前の椅子に座って腕を組むなりうとうとし出すし、楠雄くんなんて...私の肩を枕代わりに完全に寝てしまった。立って寝られるなんてなんて器用なんだろう。右肩がかなり重くて辛いのだけれど、起こすのも可哀想だし我慢するしかない。...姿勢歪まなきゃいいな。

すっかり幽霊のことを忘れてまったりムードになりかけていたところ、突然灯りが消灯したと思えば部屋全体が闇に包まれる。
私が驚いた衝撃で楠雄くんを起こしてしまった。申し訳ないけどもう少しだけ頑張って楠雄くんっ。

姿の見えない幽霊を前に3人は身構えた。
電気は消え、入り口付近からガシャンッと物が割れたり壁にドカドカッも物が壁に叩きつけられるような音が部屋中に響き渡る。
誰一人として手を触れていないのに、物体の移動や物をたたく音の発生など通常では説明のつかない現象が起こる...それがポルターガイスト現象と呼ばれるもので、それが今まさに起きている。

騒がしさの中にふと背後に気配を感じた。その気配はポルターガイストを連れながら、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくるのがわかる。振り向こうにも身体が強張って動けない。恐怖心なのか金縛りなのかはもうわからない。

「うぎゃああっ!」

突然、鳥束くんの悲鳴が部屋中に響き渡る。咄嗟にそちらの方を向けば青年が鳥束くんを見下ろしていて、一方の鳥束くんは腰を抜かしながらも青年を見上げている。

「やっと、驚いてくれた...。」

青年が満足そうな笑みと共にぼそりと呟けば、徐々にその身体は透けて行く。

「どうしても、最後に幽霊になったからには誰かを驚かせたかったんだ。こんな時間まで付き合わせて悪かったね。」

ありがとう、そう言い残して彼はその場から姿を消してしまった。3人揃って顔を見合わせた。こうして私達の不思議な夜は明けて、外に出る頃には空はぼんやりと明るくなっていた。

後日、大家さんに連絡を取ってみたところ彼はもう何年も前に"部屋で命を絶っていた"のだそうだ。

The END





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