第34χ 一富士二鷹三おっふ!(前編)@




あっという間に暮れが過ぎて元日がやって来た。
あけましておめでとうございます。

と、言うことで私は初詣に近所の神社に来ている。普段は行ったり行かなかったりするけれど、今回はなんとなく元日に脚を運ぶ気になってやって来た...が、外に出た途端後悔した。寒い。
それにみんな思うことは同じで、神社には参拝客が多くいる。神社までの道に出店が多く出ている効果もきっとあるのだろう。
周りに焼きそばやたこ焼きの香ばしいソースの香りが漂っている。朝から何も食べていないせいでお腹が鳴ってしまった。私も後でお昼がわりにいくつか買っていくとしよう。

そろそろ拝殿が見えて来る。そう言えばまだ祈願することを決めていなかった。
丁度順番待ちになっているのでその間に考えてみるも、考えれば考えるほどに何も浮かばない。一瞬、楠雄くんのことが頭を横切ったけれど、それは恥ずかし過ぎて神様にお願いできる気がしない。ここはありきたりな願いにしておこう。神様もきっとさらっと叶えてくれるはず。

...今年も面倒ごとに巻き込まれず、穏やかな一年を過ごすことができますように...

これで祈願はばっちり。後は出店に寄って帰るだけ。何を買って帰ろうかな。

「あ、仁子ちゃんじゃないか!あけましておめでとう。」
「おじさんにおばさんに...楠雄くん?あ、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますっ。」

声をかけられたと思って振りかえってみれば、そこには斉木一家の姿があった。歩み寄って年明けの挨拶を済ませる。行事を律儀にこなす斉木家だし、元日にお参りに来てもおかしくはないか。

しばらくそこで立ち話してしまった。と、言っても斉木夫妻が色々と願い事についてなどを聞かせてくれて、私が聞いているだけだったけれど。
おっと...家族水入らずのところを邪魔してしまうところだった。クリスマスもお世話になったのに、正月までその時間を奪ってしまうのは申し訳なくなくってしまう。これから参拝もするだろうし。

「私はそろそろ失礼しますね。これから参拝をされるのに、お時間取らせてすみませんでした。」
「ちょっと待ってて、仁子ちゃん。すぐ済ませてくるからさ。それでうちでおせちでも食べよう!」

私が返事する前に一家は参拝に行ってしまった。私のした願いとは違うけれど...たった今、目の前に神を見た気がする。勝手にどこかに行くと一家に心配をかけてしまうだろ。新年早々、それは避けねばならない。ここは言われたように、邪魔にならないところで参拝を終えるのを待つことにしよう。




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