「オリアーナ、これから図書館に行くんだけど君も行くかい?」
リドルはソファの背に手をかけ、オリアーナの顔を覗き込む。
「(近い……近いだろ)」
シグナスはじっとその二人の距離を見つめる。
「はい、是非」
オリアーナは開いていた本をパタンと閉じて立ち上がる。それと同時にリドルはチラリとシグナスの方を見た。
「悪いね、シグナス。しばらくオリアーナを借りていくよ」
「……どうぞ」
シグナスの言葉に満足そうに頷いたリドルはさっさと談話室から出て行ってしまった。
「また後で、シグナス」
シグナスはリドルの後を追って出ていこうとしたオリアーナの腕を掴んで止める。
「? シグナス……、どうしたの?」
「オリアーナ、ちょっと待ってくれ」
オリアーナは首を傾げながらシグナスの様子を伺う。シグナスは眉間に皺を寄せながら、オリアーナを抱き寄せ、吐息がオリアーナの耳に飛び込むぐらい近づいた。そして、小さく囁かれた言葉。
「――――――……?」
ゆっくり離れていくシグナスの体。オリアーナは不快そうにシグナスを見つめた。
「……なにそれ。どういう意味?」
「そのままだ……」
オリアーナは納得の行かない顔をしたが、リドルが待っているので早足で談話室を出ていった。シグナスは黙ってそれを見送る。
「…………」
お前の目を見ればわかるだろ。どれだけ俺がお前と一緒に過ごしたと思っているんだ。どれだけお前のことを近くで見てきたと思ってんだ……。
ただ離れていくその艶やかな黒髪に、シグナスは一つ息をついた。
・・・・・・
・・・・
・・
「意味がわからない……」
「どうした?」
ボソリと呟いた言葉に前を歩いていたリドルが訝しげに振り返った。
「いえ、なんでもありません」
――自分の気持ちにすら気付けないのか?
星と心。永遠の片想い。
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bkm