組分けの後は何も置かれていなかった金色の皿とゴブレットにローストビーフやチキン、ステーキ、ポテトなどが現れた。並んだ御馳走に生徒たちが次々と手を伸ばしていく。アデラもその料理を取り、ローブの中に潜むナーガの口にこれでもか放り入れてやる。他の蛇は食べないだろうが、ナーガほんとになんでも食べる。それで病気になったことや、腹を壊したことはないのだから大丈夫らしい。
「リドルは意外とよく食べるのね」
アデラはあまりお腹減っていなかったが、ナーガのために何度も料理に手を伸ばしいたので、隣に居た先輩がアデラは食欲旺盛だという勘違いをしたようだ。次々とアデラの前に料理を持ってきてくれる。ありがた迷惑でしかない。
デザートの後、食べ物は全て消え去り、最初と同じように金色の皿とゴブレットだけが残された。ホグワーツの校歌を歌わされて、一同は解散となった。
「スリザリンの諸君。着いて来たまえ」
偉そうにふんぞり返って一年生の先頭を歩くスリザリン生は監督生だそうだ。彼についていきながらホグワーチ城の中を歩く。ホグワーツはいくつもの塔に分かれており、さらには地下室もあり、かなり複雑な造りになっている。これは早く校内の造りを覚えなければ、移動教室にも戸惑ってしまうかもしれない。
監督生に案内されてたどり着いたのは地下室だった。暗く、すこしジメッとした雰囲気にいくつかの地下牢が並んでおり不気味な雰囲気を醸し出している。しかし、この独特な雰囲気がアデラは気に入った。今まで生活していた場所と雰囲気が似ているからかもしれない。ここがスリザリンの寮だ。狡猾で、蛇を寮のシンボルマークにしているスリザリンにはぴったりだ。
「ここが談話室だ。女子寮には左側、男子寮は正面から入る」
そこからは全員バラバラになって自分の部屋を探した。アデラも左側の扉から女子寮に入る。
「……あ。あったわ」
通路を中程まで進んだところで自分の部屋を見つけた。扉を開ければ中にはベッドが三つ置かれている。
【三人部屋だな。なんでここには一人部屋というものは存在しないんだろうな】
「そうね」
一人部屋であれば、ナーガを隠すのに気を遣う必要もなかっただろうに。既にアデラの荷物は運びこまれており、トランクやナーガが入っていた空の籠が置いてあった。トランクを開けて荷物を整理していると、扉が開いてルームメイトの二人が入ってきた。
「あ、えっと……どうも」
「よ、よろしく……」
明るめの茶髪でツリ目の少女と艶のある黒髪でおっとりとした雰囲気の少女だ。
「……えぇ」
彼女たちはまだ緊張の糸が切れていないようだ。
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bkm