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「ダーウィン、ブライアン!」

 マクゴナガルが長い羊皮紙に並んでいるだろう一年生の名前を呼んでいき、呼ばれた者は前の椅子に座って帽子を被る。そして少し間を置くと帽子が寮の名を叫ぶのだ。

「――グリフィンドール!」

 次々と生徒の名前が呼ばれ、立っている者が減っていく。

「ハインズ、ロバート!」

 汽車降りたとき、セストラルを見つめていた黒髪の少年だ。

「――スリザリン!!」
「……(同じ寮、か)」

 その少年は一度アデラを見やると、スリザリンの席に着いた。


「――ハッフルパフ!」

「――ハッフルパフ!」

「――レイブンクロー!」

「――グリフィンドール!」

「――スリザリン!」


 前に立っている生徒が最初の四分の一程になるとようやくアデラの番がきた。

「……り、リドル、アデラ!」

 マグゴナガルは少し躊躇いながらアデラの名を呼んだ。まぁ、仕方ないだろう。知っている者は知っている。……アデラの存在を。"あの人"の本名を、そしてアデラがその人の娘であること。職員の多くがじっとアデラを見つめていた。嫌悪、驚愕、恐怖、軽蔑、不安、憎悪……そんな様々な感情を込められた視線がいくつもアデラに突き刺さった。

「(嗚呼、気持ち悪い)」

 椅子に座り帽子を被る。

「君は、……ついに入ってきたね」
「(私に入って欲しくなかったかしら?)」
「そんなことはない。君は……"彼"とは違うようだ」

 アデラはその言葉を鼻で笑い飛ばした。

「(違う……? 私の入る寮は"決まって"いるでしょう?)」
「それも違う。選べるのだよ。君でも……グリフィンドールを望むならそこへ入れよう……だが、君はどこも望んでいないようだ」
「(私は決まっているもの。あの寮しか私が入るところはない)」

 私の居場所は"あそこ"にしかない。
 思い出されるのは暗い家の中……、誰もいない場所に、一人でいる私……。

「……君ならどの寮でも入れる。……だが、そこでも君が可能性を見出せるというのなら……――」


 帽子を外し、拍手のあがったテーブルへ向かおうとしたとき、帽子が静かに言葉を発した。

「君にだって選ぶ権利はあった。いや……"ある"のだよ」

 思わず足を止めてしまった。

「……なにをしているのです、Msリドル。さぁ、席にお付きなさい」
「はい……」

 馬鹿馬鹿しい。私の寮は決まっていた。すべては必然。私の道は真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐ黒い闇に伸びているのだ。



―だって"あの人"の娘だから


(選ぶ権利なんてないのよ)

(……リドルと違う寮になっちゃたな)
2017/07/29


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bkm
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