Episode.11 組分け帽子

 汽車がキングス・クロス駅を出発してすでに約六時間が経った。

「……そろそろ着くかもしれないね」

 だいたい六時間か七時間かかるってパパとママが言ってたから、というウィーズリーの言葉にアデラはふーんとだけ返す。

「それなら、そろそろ着替えた方がいいかもね」
「あ……そうだね! ……じゃあ、僕は別のコンパートメントに行って着替えてくるよ」

 ウィーズリーがトランクの中からローブを取り出すとそそくさとコンパートメントを出ていった。それを見送ると部屋のカーテンを全て閉める。そしてローブを取り出し、上着に手をかけた。
 着替えが終わり、ウィーズリーを待っていると車内アナウンスが流れた。

《あと十五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので車内に置いていってください》
「ナーガきて」

 布を捲り上げればナーガはするりと這い出てアデラの体を這った。ローブの中に入ったのを確認し、周りから見えないようにしっかり隠した。しばらくするとウィーズリーが戻ってくる。

「よかった、着替え終わってた。そろそろ通路に出よう」
「そうね」

 次々と生徒が通路に出てくので通路は身動きが取れないほどごった返している。

「(ナーガ圧死しないかしら……)」

 汽車がようやく停車し、外に生徒が流れ出ていくので少しずつではあるが混雑が緩和されつつある。アデラもウィーズリーに続いて外に出た。ホグワーツの最寄り駅であるホグズミード駅はもう夜である。暗く小さいプラットホームにはランタンを持った大男がおり一年生を呼んでいた。その大男に続き、進んでいく。上級生は駅の前にずらりと並んでいる黒い骨と皮だけの翼の生えた馬――セストラルが牽く馬車に乗り込んでいった。

「馬はいないんだね」

 ウィーズリーの言葉にアデラは首を傾げた。彼は何を言っているのだろうか……。そこで汽車の中で呼んでいた本の内容を思い出した。セストラルは"死"をみたことのある者にしか見えない、というのだ。このとき、アデラはウィーズリーとは生きる世界が違ったのだと改めて思い知らされた。
 少し離れたところで黒髪の少年がじっとセストラルの方を見つめていた。彼にも見えているのかもしれない。彼はアデラの視線に気が付くと小さくお辞儀をして隣の男の子と先に進んでいった。

「楽しみだねリドル」
「……そうね」

 正直に言うと、本当にどうでもよかった。周りの一年生たちは緊張しているか、興奮気味か。どちらにしても辺りをキョロキョロと見回すばかりだ。アデラのように堂々とした態度の上、冷静さを持っている生徒はあまりいなかった。


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bkm
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