私に、君に、幸あれ。
「「「うぁぁあ……!!」」」

 感嘆の声を漏らした少年少女。その声に釣られるように若葉も足元の白から、空へ視線を移した。

「……きれい」

 風に靡くカーテンのように揺れる光、オーロラが空に輝いていた。

「あ、あれは!?」
「オーロラよ!」
「私、日本で見られるとは思ってなかった……」

 オーロラといえば、スウェーデンとかアラスカが有名だよね。

「初めてみたぜっ!」
「すっごいよね!」

 皆、興奮した様子で様々な色に輝くオーロラを見つめていた。

「そんなっ変ですよ! 日本でオーロラなんてっ!」
「そうなんだよね……」
「は、早く大人たちの居るキャンプ場の方に戻らなきゃ」
「そうだな、風邪ひいちゃつまんねぇしな」

 忘れてはいけない。私たちは"サマー"キャンプに来たのであって、雪国に遊びにきたのでない。つまり、防寒対策なんて当然用意しているはずもなく、全員が薄着だった。風邪どころか凍傷にもなりかねない。

「……」

 雪は好きだが、仕方がない。キャンプ場の方へ戻るべく、足を踏み出そうとしたときだった。ふと、オーロラの奥……遥か上空から緑色の渦のようなものが現れる。

「おいっ! あれ!」
「……、隕石?」

 ぼう、と空を見上げていれば、それは八つに割れてこちらへ向かってきた。雪の次は隕石か。今年の夏は何が起こるかわかったもんじゃないね。ブオ、と風を切る音が近くなってきたと思ったらそれらはすべて雪の中へと落ちた。何が落ちてきたのか知らないが、人間に直撃しなかったことにほっと、息をつく。

「皆!? 怪我はない!?」
「なんとかな……」

 その何かが落ちてきた雪の中を見れば、それは掌に収まる程の小さな機械だった。その機械は地面からふわりと一人ひとりの目の前に浮き上がってきた。一体どんなカラクリになっているのか、まったくわからないが、それに手を伸ばさずにはいられなかった。

「――……」

 ぽう、と胸の奥に小さな火が灯ったように暖かくなった。

「ポケベルでもケータイでもないし……」

 ポケベルに似ているが見たことのない形である。実は精巧に作られた玩具なのだろうか。じっと機械を見つめていると、それは突如光を発した。ピピピピ……という電子音が聞こえる。それと同時に目の前に巨大な水面が現れた。ここは山の中だ。これだけの水が、一体どこから現れたというのか。

「……ッ」

 若葉は喉の奥が引きつるのを感じながら、まともに足を動かすこともできなかった。

「「「うわぁああああ!!!」」」

――そして、八人はそれに巻き込まれ、墜ちていった。


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