02
もう、ドラえもんなんてどうでもよかった。そんなことより。
「似てたなぁ、とうこさんに…」
私がぶつかって、私を支えてくれたあの人……。
サングラスしてたし、暗くてよくわからなかったけど、低くて甘い艶やかなあの声、とても綺麗だった。
でも、本人なわけないし、「ティリアン」とか口走って、聞こえてなければいいけど。
あたしは時間を確認するためバッグからケータイを…
ケータイ…を……?
……ケータイ…なぃ―…。
最悪だぁ〜!!きっと、さっきぶつかったときに、吹っ飛んだんだ!!
どうしよぅ…。探しに行こうか……、でも、もうないかもなぁ。
「買ったばっかだったのに」
私はそう言うとまた歩きだそうとした。
「あのっ」
誰かに呼び止められた。振り向くと、さっきの人だった。
私を追い掛けて来たのか、少し息を切らしている。
「はい?」
「これ君のやない?」
その人は私のケータイを握っていた。
「そっそうです!!あたしの…」
「よかった…。プリクラが貼ってあったから、おっかけてきたんや」
その人は、あたしのケータイに貼ってあるプリを指差した。
それは友達ととったやつでピンクの文字で
(安蘭けい様だぁいすき
)
と落書きされていた。
「はいっ♪よかったね」
その人は私の手をとり、ケータイを手においた。
サングラス越しだけれどその人が微笑んだのがわかった。
「あっ、ありがとうございました」
その動作はとても綺麗で、無駄がなくて、私をドキッとさせた。
「―…安蘭けい、好きなんや?」
「え…?」
その人はそう言うとサングラスを外した。
「…………!!??」
「はじめまして♪安蘭けいです」
それが、とうこさんと私の出逢い―……
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