小説 | ナノ





【 序 】

幼い頃から、幾度となく


―――毎夜、同じ夢を見た。


寄せてはかえす波のように
繰り返されるその夢は、


まるで消えゆく泡のように
目覚めた時には
おぼろげな輪郭しか残っておらず


夢うつつの朝のまどろみの中
何度、歯痒い思いをしたことか。




―――昨夜も、同じ夢を見た。


ぼんやりとした夢の形が、徐々に鮮明なものへと変わってきたのは、一体いつのことだっただろう。


同じ夢を見ていたのでは、ない。

正確に言うならば其れは
全てが “同じ設定” の夢――


夢ではなく、これは記憶なのだ と
認識したのは、一体いつのことだっただろう。




“前世”


子供の頃、そんな単語を口にしている
夢見がちなクラスの女子を、
鼻で笑ってはいたのだけれど。

そんな「夢物語」みないな話も
本当にあるのかもしれない、と
思い始めたのはいつだっただろう。




―――また今日も、同じ夢を見るのだろうか?





(夢の中でもいいから、逢いたい)


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