カバン。

「隙アリッ!」


タイチがまた悪ふざけを始めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー*




昼になって日が強くなった。

4時間目は殆ど爆睡だった。



寝起きにこの日差しはまぶしい。








ああ、空が青い。

爽やかな秋晴れだ。




うーん、

屋上で静かに寝ていたいっ!







「ちょっと!返してっ!」


ふと顔をあげると

あぁ なるほど


タイチが通学カバンを二個持って
軽やかに教室を走り回っている。


それを追いかけているのは……




……えっと……誰だっけ…




「やめなよタイチ!みあ困ってんじゃん!」

「とるなら砂漠ちゃんのにしなよぉ〜!」




……いや、なんで俺?






あ、

あーそうだそうだ、

タイチを……いや、
タイチが持ってるカバンを追いかけているのは、
整備委員の 美亜砂咲、通称「みあ」だ。



砂に咲く、と書いて 「ささき」と読む。

名字が「みあ」……



名字と名前が逆のような気もするが
触れないのが紳士、だ。







で、昼休みに入って10分たった今も、
二人はばたばた走り回っている。




そろそろみんな、
昼食を食べ始めるころだ。






……仕方ない、止めに入るか。




俺はカバンを持って腰を上げた。




あ、やっぱ持たなくていいや、
ここで食うんだし。



……さてと。






「タイチ!もうやめて飯食おうぜ!」


「あっ!砂漠ちゃ〜ん!」

そう言ってタイチは俺に走りより、

「今日は外で食べるわ!まったあとでねー☆」

と言って走り去っていった。




「まちなさああああああい!」


追いかけていくみあ。








あまり気にしたことはなかったが、
改めてみてみると、
みあは結構、かわいい。



理想はダイナマイトボディなお姉様だと
ずっと考えてたけど
ああいうのもいいかもな……




……って何考えてるんだ俺!?







゛……そう、この瞬間、
俺の初恋は始まったんだ ゛








ってナレーション入りそうだなぁ……



とか思いながら
ふと足元を見ると、
そこにあったカバンは、












「みあのじゃねぇかあああああああああああ!」







……なんだこれ、
俺に飯食うなっていうのか?
しかもこれみあにばれたら
俺も共犯だって言われるんじゃ……






ど……どうしたらいいんだ……







とりあえずそっと席に戻しておこう。
俺にはそれしかできない。



女子にばれると面倒だから
できるだけそっ……と……



「あ!それみあのじゃん!」
「ホントだ!」
「助けるふりして加担とかサイテー!」
「砂漠ちゃんそういう人だったんだぁ……」




……俺、なにか悪いことしたか?





クラス中の女子が口々に
俺を責める。



腐れ男子共も

「砂漠ちゃん抜け目ねぇww」
「さすが砂漠ちゃんww」
「みあにゾッコンだった、とか?」
「砂漠ちゃんクールと見せかけてそういうww」




……俺、俺ただカバン戻した
だけだぞ?

つかむしろ俺、
いいことしたつもりだったんだけど?









・・・・理不尽な扱いに呆然と立ち尽くしたこの昼休みは、


一生の恥ランキング1位に堂々のランクインを果たしたのだった。









タイチの奴、
帰ってきたらただじゃおかん・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーー*



*続く*


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