ブラウン管テレビの上で膝を抱えて言う、これは己なのだと。
汚いかな、と目をすこし覗かせたから褪せたポラロイド写真をくしゃくしゃにした俺はこいつは変わってしまったな、と感情を押し潰しながら思う。
(いちいち切れたりなんかしない、もう大人だからこれでいい)

「そっくりだ」「きみもだ」
なにもない俺よりはましだけど。白黒の砂模様しか映し出さないのか映し出せないのか知らないが、無意味なテレビで「こんなものだったなんて嫌だね、君も俺も」色味の無いことも、意味が無かったことも、「信じていれるかい」砂嵐は臨也そのものだ、見えない、分からない、「哀れだと思えるかい」モザイク的な未知


「愛をうたったことも全部が全部ないがしろ。いらなかったんだよ俺は。怖い、虚しいだけ、つまるところ」

臨也の「愛」は無駄だったということ、誰も求めてはいなかったということ。テレビの裏からも這い出てきた真実を、(つぎはこいつらを、愛そうと、してる)
見えないんだから届くわけもなかったんだろう、知らなかったのか馬鹿だねえお前、だからうん、さっさと降りてこい。そう俺が写真を離してまで手を伸ばしてやったのにこいつときたらテレビから降りるだけ降りておいてもたれかかる。


「それでも、それでもねえ」
君を愛してた。

ごめんね、と零されたディップソース
そんな未知に浸かる程おれは安直ではない。モザイクに埋まり食われていく姿に対して俺は止める権限も止められるほどの、普段は疎ましいほどの強さもその時ばかりは皆無、手を伸ばせなかった俺自身に苛立った。遅い自責。
(なら置いてくなよ受け入れてしまえたかもしれないのに、おまえはいつだって自分勝手に、ほんとう、)

しゃがみこんで地面のプラスチックを鳴らす。これはどの部品だろうか。ミックスされる思考、気付いていたのに。あいつから漏れていたモザイクに、少しだけれど嬉しさを感じていたのに。あああでもやっぱ変わんねえや、消えてった、おまえはそんな諦めの早い奴じゃなかったろう?どこで履き違えた?迷った?両つまさきの間にぼたぼたと零した水滴が勢いよくはじける。 (履き違えた靴なら俺が正してやれるし迷ってたなら俺が元に戻してやれた、怖がってたんだ気付いてたのに、未知も路も俺が、次は、俺は、臨也、)


おれもおまえもばかだね
自分を、憎んでしまうんだから

 





[*前] | [次#]
ページ:






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -