内部


君はひとりを愛さないの。
どうしてこう医者のいる部屋というのは色味が無いのかと生来の疑問を改めて浮かべる。観葉植物くらいはあるけどやっぱりどこか色味が無いしこんなの病院だけで十分だろう、新羅の部屋に来るたび思う。

僕を見習ってひとりを見つけて愛してみたらどう?そう目を伏せてから言ってきた。爪の先を親指と中指で掴んでから思う、それは愚問だって。ひとつの愛は俺に必要ないし邪魔で汚いとすら思えてしまう。「誰かひとりを愛したとして、そしたらもうそれは俺じゃない。折原臨也じゃない」

(俺は俺が俺じゃなくなるのが怖いのかもしれなくて)

「怖いんだろ、拒絶が」


こわくないよ。(こわくない)
中指と親指が白っぽくなって、赤い愛みたいな色は真ん中に浮かんだ。君は君なのに。そう言ったのは新羅で、その時ばかりは俺はお前みたいに頭の中がうまく出来てないんだと思った。
(ほんとうは、多分、)



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