海馬


(もういいかい)
(まあだだよ)


子供の頃の記憶は曖昧だ。誰だってそうだろ?記憶は消えていくもの、例えば今だってそうだ、地面を踏んだ記憶も、いまここに居た記憶すらも近い未来ですぐ無くす。俺は記憶が保たない、のかもしれない。すぐ忘れてしまってる、怖いね。気付かない内に支配されてく。そこでようやく器官の限界を思い知るわけ。

世界に子供が隠れてる。たくさんの記憶を奪ってって2人寂しくかくれんぼ。寂しいね。(寂しくないよ)空から落ちる子供の声、そんなもん探してんじゃないよ。俺は俺じゃなくて君の持った記憶だけ探してる。もうどの位経ったかな?そろそろ飽きてきちゃったよ。ねぇ君は誰なのうざったいよ、「もう止めよう?」
抑揚のない声で「ふざけないで」どこか聞き覚えのある声だった。


『僕は、君なのに』

こころが揺れた。地面が揺れた。
一気に何かがが氾濫する。こころの堤防も壊れました。ごめんなさい助からない。
記憶がまた消えてく、俺も俺の中から消えてった?

『見つけてよ』記憶じゃなくて器官が曖昧、どこにだってこの子が悪い理由は無かった。『お願い』悪かったのは全部俺、器官に支配された俺だけなんだね『消さないで』ごめん、ごめんね。あんまり記憶にないんだ君のこと、忘れてたがってるのかもしれないんだ

『寂しいよ』


(もういいかい)
(もういいよ)


諦めた子供の247回目の、相槌

(この回数も忘れてくのかな)




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