剥離


首がつる感覚が嫌いだ。しばらく頭は動かせないしなにより感覚が嫌い。軸を刺されて無理やり引き剥がされていくような。剥がしきったあとは熱を持って縫われて、いくような。
死ぬほどの痛みを味わったことはないけど、きっとこういうのが一番近い。剥がしきった後に起こるあの痛みはきっと仕方なく生かしてやろう、そういう体のいらない優しさかもしれないなぁ。痛みを浴びるなら、どうせなら。そのまま殺してくれりゃいいのにね。慈悲深いとも言えないね。


きっと俺を殺すのは彼で、彼もまた俺に殺されるんだろう。なら一つ協定を結ぼうじゃないか。携帯を取り出して電話をかける。電波は3本、きっちり立ってるのを確認して鳴らす3コール、はい。そう言う声は至って普通だった。やあシズちゃん?彼は相変わらずの反応で何で手前が番号知ってんだよ、大声でわめき散らすもんだから耳が痛くなってしまう。そんなことより、さっさと言おう

「協定、結ばない?3つでいい」

何言ってんだと不機嫌に言うのを無視して続ける、耳に熱がこもる。じゃあ言うね。聞き逃したりしたら駄目だよ。
初めに、同情なんて死んでもかけないで。次。君を殺すのは俺で、俺を殺すのもまた君だ。だから他の奴に殺されるなんて絶対にやめて。次、これで最後。電話の向こうからは周囲の音しか聞こえない、そんなことは気になんてなんないけど。


「殺すときは、一瞬で。余計な優しさはかけないで。」


何かを彼は言いかけたけど何も聞きたくなくって、「約束だよ、シズちゃん」。それだけ言って電源ボタンを3回押して、電話は切れた。残ったのはいつもの待ち受け画面、3本きっちり立った電波と電池残量
きっと怒ってんだろうな、そう思うけどいつだって俺は「思う」だけ。そこまでで終わり、それ程までに俺と彼の距離は近くなんか、なかったんだ。でもそれでも。


(何でったって、)

(君と居たかったのに、なんて、思っちゃうからだよ)





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