この話をするかどうか、長く長く迷っていた。
だけど、全てが終わってしまう前に、全ての始まりでもあるあの頃を思い出し、そして向き合わなければならないと思ったんだ。
時が経つにつれて、記憶が薄れて風化する。
四季を巡っていくにつれて、春の若葉の色が、夏の眩しいばかりの日射しが、秋のたゆたう紅葉が、冬の清らかな雪が、あの日あの時に見た桜の薄紅色を塗りつぶして上書きをする。
だが、あの季節、君は俺を導いてくれて、俺は間違いなく君に恋をしていたと思う。
願えるのなら、一つだけ聞きたい。
卒業式の日、君はこう言った。
『この先、君達は長く遠い道を歩むことになるだろう。だけど、君達には力強く歩いていく力も道標となる夢もある。だから、まっすぐ歩いていけば君達の求めるものにたどりつけるよ』
今でも君の言葉をはっきりと覚えている。
だけど、どうしてだろう。歩いていくにつれ、君が遠ざかっていると感じるのは。
君の背中を追いかけて歩むと決めたこの道の先に、君は本当にいるのだろうか。色褪せていく数年前の記憶の中ではなく、俺が歩む道の先に。
その答えが、どうしても聞きたい。
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時が経ち、記憶が薄れ、
俺はついにあの頃に向き合う決意をした。