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4.

※慧side

毎朝なんでもなさそうな表情で俺を送り出してくれる恋人が、実は寂しがっていたことは知っていた。

だが、会社と情報屋の仕事に忙殺されてて、早く追いつこうとさらにのめり込んでいって、二人きりの時間を大事にしなかった。

その結果が、これだ。

(自業自得でしかねぇじゃねぇか…)

誰よりも皓を愛している自信がある。

なら、皓に誰よりも深い愛を感じさせることは本当にできていたんだろうか。

(もし、もしもだ、…もしも皓に他に好きな人ができたら俺は、…大人しく手を引くべきか?)

誰よりも愛しい人の未来を、俺よりもその人を愛せて心を満たしてやれる他の誰かに託した方がいいんだろうか。…その方が皓は幸せで、笑っていられるんだろうか。

朝、俺をマンションから送り出すような表情をもうしなくなるんだろうか。

頭にグルグル回る嫌な思考に、奥歯を噛み締めた。無意識に握りしめた指の爪が白くなって、肌に付けた傷が鋭く痛みだすまで、俺は自分が拳を作っていたことにすら気付かなかった。

長く力を入れていた指をゆっくりと伸ばしてみれば、それは小刻みに震えていた。

離したくないのに、大事に大事に愛したいのに、離れていく背中に手を伸ばしてすがりつく勇気すらない俺は最低な臆病者だ。


切り立った崖に咲く花に恋をした。

それが欲しくて、そのことしか考えられなくて、必死に手を伸ばして背伸びをして、やっとの思いで綺麗に咲くその花を手に入れた。

なのに、俺は水をやることも愛することもできなくて放置した。だったら、萎れかけた花をもっと愛を与えて、きちんと世話のできる人に渡した方が綺麗に鮮やかに幸せそうに咲くんだろうか。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。