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2.


俺が不満を言えば何か変わったんだろうか。

だが、恋人としても、自らの手で慧に合格証明書を与えた先輩としても何も言えなかった。

慧の本気を疑うことはしたくなかったし、みっともなく縋りつくことも、情報屋にやり甲斐を感じている慧の邪魔もしたくなかった。

そして、ついに決定的なことが起こってしまった。

1月21日、慧と休みが重なった土曜日、ターゲットに付き合うことになったと申し訳なさそうに言う慧を送り出し、俺も出かけた。

慧といられないのは寂しいが、今日ばかりはどうしても外せない用がある。慧から一緒にいられないと言ってくれたことに安堵さえしていた。

一年に一度の大切な日。

かつて誰よりも傍に立っていた親友の、…命日。

親友であり同僚でありパートナーであった彼は生前とても明るくて、自分が死んだらユリや菊にせずに明るい花にしてほしいと冗談を言っていた。冗談は今や遺言に変わり、俺は二年目の命日である今日も手向けとは思えない花束を買った。

駅前の花屋で黄色や薄いオレンジの花達を受け取った。いつもは指輪をしないが、今日だけは親友が遺した指輪をつけていた。

花束を受け取って、少し離れた駐車場に停めた車に戻る最中に信号に捕まって。

赤信号の向こうに今朝送り出した恋人と、彼に腕を絡めたターゲットを見付けた。少し年上の綺麗な女性だった。お互い幸せそうに微笑みあったひどくお似合いのカップル。

一瞬、慧と目が合って。

咄嗟に指輪をした左手を隠そうとしても、花束を握っていたから隠せなくて。

大きく見開かれた慧の目は相変わらず綺麗な薄いブラウンで、こちらに駆け出そうとしたのが見えたが、ターゲットに腕を絡められて赤信号にも邪魔をされて苦々しい表情をしたのが見えた。

今こっちに来て何がしたいんだろうか。つい鼻で笑って信号が変わる前に俺は踵を返した。

背中に突き刺さる視線を感じながら。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。