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4.


カジノは地下に位置していた。

地下にだけ向かうエレベーターは表から見えないように隠されていて、普通のルームキーでは動かせないようになっていた。

だが、毎回コンシェルジュが同行するのではないらしく、特定の客が来た時だけルームキーにプログラムを追加しているという。慧は新規の客でプログラムが組み込まれていないから同行した。

俺は防犯カメラシステムにハッキングしたから知っているが、カジノへの出入り口はこのエレベーターだけでなく、他に二つの階段がある。だが、どれも最後のドアを開けるにはキーが必要になるから、やはり認められた客しか入れない。

「ようこそ、清宮様、朝倉様」

ドアの向こう側は、もはや別世界になっていた。

ホテル本来のリラックスできる穏やかな雰囲気は消えていて、代わりに喧騒と熱気に満ちている。

明るすぎない照明。それぞれのテーブルには一人ずつディーラー(胴元)と呼ばれるカジノ側のスタッフがいて、テーブルを囲む客達を盛り上げながら手際良くゲームを進行していた。

音楽は流れているが、談笑の声やギャンブルの結果に一喜一憂する悲鳴にかき消されていた。

高い銘柄の煙草の匂い。ブランド物の香水の香り。ウィスキーやブランデーなどの強いアルコール。いろんな匂いが混ざったその場所に少しいるだけで匂いが取れなくなってしまいそうだ。

だが、隣から香る紅茶とシトラスとムスクの香りに心が落ち着いていくのを感じた。

(慧が傍にいるだけで安心する)

自然にそう思う俺はホスト上がりだとは思えないほど安くて、心底慧に惚れきってるんだろう。

だが、慧は毎日綺麗な女性を取っ替え引っ替えで侍らせている。仕事だから強くも言えなくて、そこまで考えれば苦虫を噛み潰したような顔になった。

まぁ、御曹司の行動に納得していない執事としてはちょうどよかったんだろうが。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。