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5.


(は、はぁあ!?)

口が開きそうになるのを必死に耐えた。

昨日は100億で合意したんだ。いくら実際に金を用意する必要がなくて、小切手で計画を進めると言っても、限界が100億と言った翌日に言い値で買い取るのは不自然で怪しまれるだろう。

だが、焦っている俺をよそに慧は余裕を浮かべていた。そして、少しばかり悩む素振りを見せた後、ついに加賀美は口を開いた。

「…500億、だな」

相場より若干高め。

いや、カジノがついて、その収益も考慮すると決して高額ではなく妥当な価格と言えた。

だが、残り300億以上の金額を要求する、という言葉が飛び出すはなかった。加賀美はもう一口煙草を吸って、濁った煙を長く吐き出した。

「…だが、そちらの限度は朝倉様から伺っている。それに用意できないから、と89億以上を持ってまたカジノで遊ばれては恐ろしい」

ククッ、と加賀美が喉で笑った。

「100億の上乗せで同意しよう」

ほっ、と胸を撫で下ろした。

加賀美は捜査の手が伸びていると知っているから、同意せざるを得ない。普通に考えればそれが理由だが、妙に納得できない部分があった。

「それに、…私は金なんて紙屑がそんなに重要だとは思っていないんだ」

「へぇ?」

「死んだら金なんて用無しだ。金があったとしても命は買えず、無念を晴らせるわけでもない。だが、金の醜い光に目が眩んで何も見えなくなった者は多い、…信頼も、仲間も」

「何が言いたい?」

慧が低く唸るように問いかける。

僅かに警戒が浮かび出た声に臆することもなく、加賀美はむしろ愉快そうに慧に目線を合わせ、そして、微笑みながら聞いた。ぞっとするほど冷たい微笑みで、刃にさえ似ていた。

「もしもの話だ、清宮様」

加賀美の瞳は荒野の鷲のように荒々しい。

「もし、あなたが大切な人を守るために命を賭けて、だが、その誰かは金のためにあなたを見捨てて逃げたのだとしたら、…あなたはどう思う?果たして死にきれるのだろうか?」

心臓が、凍り付いた気がした。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。