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4.


「…あぁ、お待ちしていた、朝倉様」

その人物は広い部屋の奥、革張りのソファーに座っていた。カツ、カツ、と靴の音がよく響く大理石の床を進みながら彼を観察する。

年齢は二十代半ば過ぎくらい。資料によると28歳だが、見た目はそれより若く見える。

俺よりはいくらか年上だが、滲み出た貫禄がさらに落ち着きを見せる。髪は金に染められているのに、それが決して軽く見えないくらいには彼が纏う雰囲気はずっしりと重たかった。

落ち着きなんてものじゃない。重いんだ。俺が無意識に身構えてしまうほどに。

もはや威圧感と言ってもいいほどに。

こちらを見据える鳶色の切れ長の目。薄い唇が銜えた煙草からは真っ白な煙が立ち上り、濃いその香りは俺にまで届いた。

ジュ、と煙草を灰皿に押し付けて、髪を掻き上げる間も彼の視線は俺から外さない。

濃いグレーのスーツはとても上品なのに彼が着ると野性味を帯びる。それは洗練されたものだったが、綺麗な慧とはまた違う。

たとえるならば飢えたハイエナのような、…もしくは暗闇の中で目を光らせる虎のような、獰猛で、一瞬でも目を逸らせば喉笛から噛みちぎられるような危うい野性味だったんだ。

(こいつと二人っきりかよ…)

ニヤリ、と彼の目が笑った。

獲物を見定める鷲のような瞳だ。

「どうぞ、座ってくれ」

「ありがとうございます」

そして、彼の重たくのしかかる雰囲気に、この表面だけ取り繕ったような丁寧な口調はとても違和感が感じられたんだ。

「ワインがありますが、」

「お気持ちのみ頂戴いたします」

それがこの加賀美 高虎(かがみ・たかとら)という男、つまり、俺達の任務対象であるホテルとカジノの所有者だった。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。