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5.


それは政府からの依頼だった。

いくらTCCEに合格したら表政府から認められた情報屋になれるといっても、実際政府から依頼が降りてくることは少ない。つまり、今回はそれだけ難易度も危険度も高いということだ。

依頼内容としてはこうだ。

某有名高級ホテルの地下に不法賭博場を確認した。今すぐにでも押さえたいが、トップの正体も分からず、カジノを押さえたところでトップを逃がす可能性があるから手が出せないでいる。

トップの情報ならびにカジノ経営の証拠を手に入れ、可能ならば身柄を拘束せよ、とのことだ。

長ったらしいメールを確認し終えて、重たい溜め息を吐いた。依頼を受けずに断ることも可能だが、今は頭を動かして気を紛らわせたかった。

だが、この振動は依頼のメール特有のものであると知っているのは俺だけじゃないわけで、半年も一緒に住んでいる慧は当たり前のように知っていて、心配そうに俺を見ていた。

「難しい依頼か?」

「…そうだな」

この時、嘘を吐けばよかったのに。

簡単だ、と言えばよかったのに。

何も考えずに本当のことを言ってしまったからこそ、慧がこう言ってしまった。

「なら、俺と組め」

怯えも躊躇いもない眼差しだった。

俺を見据えるその眼差しは睨んでいるようにすら見えて、拒否を選ばせてくれそうにない。依頼内容も何も知らないのに、俺が溜め息を吐いただけで一緒に組めだなんて考えなしにも程がある。

心配されていることと、信頼してくれていることは嬉しかった。だが、この依頼は慧には無理だ。

ひどい言い方だが、イカサマが横行するギャンブルの世界にハニートラップが介入する余地はない。この依頼を受けるには、経験も技術も慧にはまだまだ足りていなかった。

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目には目を、歯には歯を。
罠には罠をもって制するのが最善だ。