14.
俺のハンドはクラブのA、クラブのK、クラブの6、ダイアの8、ハートの3。
クラブが3枚あるから通常はダイアの8とハートの3を捨てて、ハンドが同じスートになるフラッシュを狙いに行くべきだ。相手のハンドも考慮すれば多少確率は変わるが、2枚交換して、新たに引いた2枚ともクラブである確率は約1/16。6.25%。
ポーカーにおいて、6.25%は低い確率じゃない。賭けに出るべきだろう、…通常なら。
だが、今はゲームの目的が真逆になっている。
(このハンドで負けを目指すなら…)
そもそも、今この時点で既に役なしであり、ハイカードなんだから交換しない方が負ける確率が高いだろう。だが、交換しなければ不審がられるのは間違いないから、やはり交換しなければならない。
フラッシュを目指してはならない。逆にフラッシュから遠ざかるべきである。つまり、捨てるのは、
(クラブのAとクラブのK)
新たに引いた2枚は、
(スペードのJとスペードの4)
新しいハンドはスペードのJ、ダイアの8、クラブの6、スペードの4、ハートの3だ。思わず鼻で笑い飛ばしたくなる弱さだ。弱いにも程がある。
俺の判断は果たして正しかったんだろうか、と元凶を見たが、俺をここまで悩ませたそいつは至って涼しげな顔でけろっとしていた。
(うわぁあああぁあ…!)
カードを握る手に力がこもった。
「俺はこれでいい。一応聞くが、フォールド(棄権)したいか?慧」
「しねぇよ」
「そうか。じゃあ、」
そして、互いのハンドをテーブルに置いた。
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