その青に溺れる | ナノ


▽ 1話



日差しが暑くて倒れそう、そう思いながら桐原琴音は歩いた。

彼女はジャンケンで負けた為部活の買い出しに行かされていた。小麦粉という肝心なものを買い忘れてきた顧問に文句を言いたいがそんな顧問が今日は居ない。

「も、あつい。むりー…」

小麦粉片手に倒れそうな琴音。フラフラと歩いているとシャー、っと音がしてそちらを向けば深い青が目に入った。溺れてしまいそうな、深い青だ。

キキッ、と目の前でその人が止まった。知り合いにこんな人いないはず、琴音がきょとんとしているとその男の子はスッとボトルを渡してきた。

「へ」

なぜ渡されたのかわからず気の抜けそうな返事をする琴音に男の子はニッコリ笑いながら飲んで、と言う。

「後ろから見たときフラフラしてたから。暑いし水分取ったほうがいいよ」

ね?と言う男の子にありがとう、と言い琴音はボトルから飲もうとするが中身が出てこない。
ん?と首を傾げるとああ、と男の子がボトルの飲み方を説明してくれる。
そういえば幼馴染たちもこんな物持っていたな、と思いながら琴音は教えてもらったやり方でぐびぐびと飲み物を飲む。
暑さにやられ、疲れた体に染み込んでいく。

「ありがとう…!」

琴音がそう言えば男の子は笑ってどういたしましてと言う。

「ボトル洗って返すね」

「別にいいよ?」

「私がそうしたいから、だめ?」

「じゃあお願いしようかな」

オレ箱根学園にいるから!じゃあねー!と行って走り出す男の子。
名前は聞けなかったけど、同じ学校の子だった。
というか、あの紹介の仕方。

「もしかして私が箱学の生徒だってわかってない?」

たしかに上は自分のTシャツだ。下は箱学のジャージだけど、彼はそこまで見てなかったかもしれない。

「今度会ったらちゃんと名前聞こう」

あと私も自己紹介しよう、そう思いながら琴音は学校に向かって歩き出した。

2018.11.21

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