貴方のことを教えて欲しい
「死柄木弔」
はい、おわりと言えば涙はえー!と叫んだ。
うるさい、ここ喫茶店だぞと睨むが涙には全く効果がなかった。
「もっとあるじゃん!色々さぁ!」
「例えば?」
「好きなものとか嫌いなものとか!!」
「知ってどうすんの」
「嬉しい!!!」
「そんだけかよ」
「そんだけって言うけど、好きな人のことたくさん知りたいじゃん!」
それって普通じゃないの?と言ってくる涙にわからないと返せば涙はじゃあわかって!と無茶振りをしてくる。そして変わらずマイペースに聞いてくる。
「弔くんの好きなものは?ねぇー、弔くーん」
「その呼び方やめろ」
「じゃあダーリン?」
「やめろ」
ダーリンがダメなら弔くんでいいじゃん!とぶーぶー文句言う涙。
わかった名前でいいよ、と投げやりに言えばやったーと嬉しそうにする。
名前呼ぶだけでこんな嬉しそうにするなんて、なんて簡単な女なんだ。死柄木はある意味羨ましいと思った。
「で、弔くんの好きなものは?嫌いなものは?」
「嫌いなものならたくさんあるよ」
例えばヒーローとかね、こう言ったらこの女はどんな反応をするか気になってそう言った。
まぁ、事実ヒーローは嫌いなわけだが。
「どのヒーロー?私も嫌いな人もいるよー」
人間だもん、好き嫌いあるよねとキャッキャ言う涙に頭を抱えたくなる。
違う、そういう意味じゃない。
「ヒーローそのもの、って言ったら?」
死柄木はそう言い直すと涙は笑いをとめ、真剣な顔をする。
「嫌いでもいいんじゃない?」
「は?」
普通ありえない、とかそんな答えが返ってくると思っていた。
でもこの女は真剣な顔で別にいいというような返しをしてくる。
「弔くんはヒーロー嫌いなんでしょ?」
「そうだよ」
「なら嫌いでいいじゃん」
嫌いなもんは仕方なくない?私もピーマン嫌いだしさー、とさっきまでのおちゃらけた態度を織り交ぜてくる。
ああ、なんだろう。ちょっと興味が出た。
「そうだ!弔くん!!」
「なんだよ」
涙はカバンの中をガサゴソとあさり、じゃんと言いながら携帯電話を取り出した。
「連絡先、交換しよ?」
「やだ」
「即答!?」
いいじゃん!交換しようよー!と必死な涙。
それに仕方ないなと言えばまた涙は嬉しそうに笑う。
「ダーリンって登録しとくね」
「やめろ」
冗談、ちゃんと弔くんでいれたから!と涙は自分の携帯の画面を見せてくる。
「流石にそろそろ帰らなきゃだからね」
ダーリンと離れるの寂しいけど!とふざけて言う涙のデコを死柄木は軽く小突いた。
「今日は私の奢りね」
付き合ってくれたお礼、と涙は伝票を持ちささっと支払いを済ませる。
そして2人で外に出ると、だいぶ空は暗くなっていた。
「じゃあ、またね弔くん!」
そう言って涙は帰っていった。
2016.6.13