大好きな貴方へ | ナノ

私を知ってからでも遅くはない


「馬鹿か」

思わず死柄木はそう言った。
この女を知って自分に何の得がある、と苛立ちが募る。

「とりあえず私のこと知ってよ」

ふるのはそれからでもいいじゃん!と涙は頬を膨らませる。なんだこの女、そうやればかわいいと思ってんのかと死柄木は言いたくなったがそれは言わないでおいた、長くなりそうだと思ったからだ。

「で、お前の何を」

知ればいいんだ?と言おうとしたら涙はお前じゃないー!と喚く。非常にうるさい。

「涙!!ちゃんと名乗ったじゃん!!」

「はいはい、涙ね」

仕方なしに名前で呼んでやれば涙は満面の笑み。こういう顔は悪くないかも、と少しだけ思う。

「まずはプロフィールね!」

性別、身長、体重と涙は続けていく。

「趣味はお菓子作り!これね、結構意外って言われるのね!」

「だろうな」

見た目は今どきギャルといった感じでスカート短い、化粧は濃い、髪の毛はブリーチしまくって傷んでいる。そんなやつが可愛らしくお菓子作り!なんて言うなんて誰が思う。

「あと化粧とかー、ウィンドウショッピングも好き」

ああ、それは見た目のまんまなのかと思わず頷いてしまう。

「あと何知りたい、お兄さん!」

そういう涙に別にない、と答えるとえー!と不満そうな声を上げる。

「普通あるじゃん!!男の人なら気にならない?スリーサイズとかさー」

「貧相な癖に何言ってんの」

「着痩せするタイプかもしんないじゃん!!!」

確かにそんなないけどさー!と涙は怒る。
死柄木はそんな涙に、だいたいスリーサイズを知ってどうしろというんだと言えば、私の体でいやらしい事想像しやすくなんじゃんと言った。

「馬鹿なの?」

この女はほんとに馬鹿なのか。何故初対面の女を想像してそんなことしなきゃならない。
ため息を思わずつく死柄木を気にせずに、涙は自分の胸のサイズを言う。

「おっぱいはCカップね」

そう言った女の胸元をチラリと見るが、そこにあるのは小さな山。絶対ないだろCも。

「盛るな」

「盛ってないから!!!」

男が思ってるよりCって小さいからね!!と怒る涙。
やっぱり小さいんじゃないか、と思いながらごめんね、と思ってもない言葉をとりあえず言っておく。

「とにかく!私のことはこんなもんでいいよね!」

メモした?と聞いてくる涙にするわけないだろと返す死柄木。

それをスルーして涙は笑いながら。

「次はお兄さんの番ね!」

死柄木は深いため息をついた。


2016.6.12

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