君の匂い/出久ひくひくと彼女は鼻を動かし、出久の匂いを嗅ぐ。
「名前ちゃん?」
どうしたの?と出久は聞く。幼なじみとはいえ近すぎるこの距離に彼は動揺した。そんな彼の気持ちに気づかないまま名前は出久の背中に顔を埋めながら答える。
「出久くんはとてもいい匂いがするの」
くんくんと嗅ぐのをやめない彼女にやめてよ、と恥ずかしそうにする彼。しかし彼女はやめずに匂いを嗅ぎながら、その感想を言う。
「出久くんの匂いは、なんというか…。よくわからない…」
でも私は好き、と言う彼女に出久は顔を真っ赤にする。まさか女の子から好きだなんて言われると思っていなかったのだ。
「ぼ、ぼぼ、僕のこと!?」
「好きだよ」
「に、匂いがって意味だよね、そうにきまってる」
はは、そうだよね。匂いだけだよね、と突然卑屈になる出久に名前はハッキリとした声で言う。
「違う」
出久の匂いはたしかに好き。
でもそれは。
「出久くんのことが大好きだからだよ」
ぎゅーと後ろから抱きついてくる名前。
出久は赤い顔をさらに赤くした、もはやゆでダコのようである。
「出久くんは?」
「へっ」
「出久くんは、私のこと、好き?」
「す、す、すすす、好き、だよ」
そう答えたら名前は嬉しそうに、そっかぁと言った。
そして彼女は顔を真っ赤にした状態の出久に更なる爆弾を落としていくのだった。
「知ってる?女の子って匂いで自分に合う人を探してるの。それでね、それが私にとっての出久くんで。
つまり抱いて欲しいって思ってるんだよ」
「わぁぁぁぁ!!!名前ちゃん!?な、なななっ!?」
「だーいすき、出久くん」
2016.6.3
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