「お、お前は一体…!?」

驚きの色をかくせない桃太郎、その目の前に立ちはだかる女性はにっこりと笑い、
「会いたかったわ」
しっかりと桃太郎を抱きしめた。


「ま、待て、待ってくれ。お前は一体何なんだ?!」
「だからさっきから言ってるじゃない。私はあなたのお母さんよ!」


――――意味がわからない!
桃から生まれた俺にとって両親はこの、おじいさん、おばあさんだ。この女は一体何を言っている?

「あなた、どういうつもりですか?この子はうちの子です。その手をはなしなさい!」
おばあさんはしっかりと桃太郎の手をとり、その女性からひきはがした。

「何のつもりだか知りませんが、今すぐこの家から出て行きなさい!」
「待ってくればーさん。俺は…俺はこの女に聞きたいことがある」

桃太郎がふらりと立ち、再び女性の前に立った。


「お前は…お前が俺の母親だと?」
「ええ、そうよ」
「俺は、ここのじーさんとばーさんに拾われてここで育った…。もちろん二人とは血がつながっていない。でもそれは、俺が桃から生まれたからだ!」

本当にそんな話を信じたのか頭の弱い奴め。

「それは嘘よ!あなたを利用するためにそのしなびた女がついた嘘なの…。そのせいで、私はなかなかあなたに会えなかった。」
「そんなまさか…嘘だろ」


桃太郎は母親代わりのおばあさんを振り返る。
しかしおばあさんは悲しげな顔でうつむき
「………」
答えはなかった。

「そんな…違うって言えよ!」
「………」
「あなたはだまされていたのよ。鬼を倒し、莫大な財を得たあなたを殺せば、親権の持つそのばーさんにはそっくり遺産が転がりこむわ!」
「だまれ!」

「その証拠に…そうね…
あなたに鬼を倒してくるよう仕向けたのはおばあさんではなかったかしら?」
「……っ!!!」

鮮明によみがえる記憶が彼女の言葉を裏付ける。
「はじめから利用するつもりだったのよ、そして殺すつもりだった!でももう大丈夫よ。本当の母親である私に親権が戻れば、その心配もなくなるわ」


「だまりなさい!!!」


うつむき、黙り込んでいたおばあさんが突然に吠えた。




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