手を伸ばしたくなる20題
行こう
「あんどーさぁん」

甘えた声で俺を呼ぶのは後輩で同室の石川。
ラウンジに来るのは珍しい。
大抵城さんと部屋でじゃれてるから。
年離れてるのに仲良いとは思ってた。

「淋しい……」
「……そうか」

ヤバい。
来る、かも………。

「だからぎゅってして?」

はい来た。
酔うとこれだ。
隊長とは反対に普段自分からスキンシップ図るタイプなのにな。
酔うと甘えた声で“してして”と強請る。
石川は俺より背が高いのにこんな瞬間は、なんというか……。

「可愛いなぁ登は」
「あ〜ろぅさん〜」
「あんちゃんがしてやろうな〜」
「や〜。あんどーさんが良いのっ」

嫌と言いつつ抱き締めて貰って。
ぐずる赤ん坊みたいにロウさんの腕の中でもぞもぞする。

「あんちゃんじゃ嫌か〜?」
「や〜」

それにしてもロウさん、石川に甘すぎじゃないか?
ロウさんってキャラこんなだっけ。

「城さんはどうしたんだ、石川?」
「ざんぎょーで構ってくんない。
センター行こうとしたら兄ちゃんに叱られた……」

一応城さんに連絡入れとこ。

「じょぉさんの馬鹿〜兄ちゃんのいけず…」
「よしよしあんちゃんがいてやるぞ〜」
「ろぅさんヤダ〜あんどーさんが良い〜」
「振られたね、ロウ」
「うっさいパレ!嫌味か!」
「パレさんだぁ〜」
「ふふ。ロウより良いってさ」
「登〜あんちゃんじゃダメなのか?」

そっとその場から抜け出す。
パレさんは行ってらっしゃいとばかりに手を振る。
……かなわないなぁ。

「失礼します」
「安藤?」

センターには残業と思しき城さんと、室班の室井さんだけ。

「城さん。ラウンジで石川が大暴れしてます」
「………隊長は?」
「外ですね」
「真矢さんは」
「今日は夜勤待機組だったと」
「………分かった。五分で行く」


それからきっかり五分後。
仕事を終わらせた城さんは俺とセンターを出る。

「登」
「城さんっ!!」

嬉しそうに石川は駆け寄って来て、城さんに飛び付く。

「帰るぞ」
「え〜?やだっ。パレさんと一緒……」
「登」
「………うん」
「行こう。お騒がせしました」

連れ立って帰っていく。
登使いと呼ばせて貰おう。

「安藤、お疲れ様」

本当にどっと疲れた。
可愛い後輩だから文句は無いけど。
………これじゃぁ登に甘いとか他の人に言えないな。


+++++
登の同室で同じく外警先輩の安藤君の受難
なんだかロウさんを履き違えててすみません
しかも片想い気味(恋じゃなく)
パレさんは繊細な外見の割りに強かそうなので
位置はお姉さんっぽい感じで。


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