登は大変珍しくセンターに居た。
「お……終わらねぇ!」
「ファイト〜」
「頑張って、登君」
「やれば出来るっ」
「できねーっ!!」
パソコンをひっくり返さんばかりの登。
「石川!!先輩に対して失礼だろうがっ」
「わっ!?隊長っ!」
厳しい瞳で登を睨むのは実兄悠だ。
「西脇が出来ない仕事を任せる筈か無い。その信頼に応えろ」
「………はい」
そう。
西脇に任せられたのだ。
しかしやってもやっても終わらない仕事。
実はあと10分で定時。
しかし全く持って上がれそうもない登である。
「食事は採るようにな」
それだけ言うと悠はセンターを出て行ってしまった。
(今日は城さんの言ってたDVD観る予定だったのに〜!)
泣きそうな登は必死にキーボードの上に指を踊らせた。
定時から約三時間。
いつの間にか遅番の隊員達も姿を消し、残るは夜勤の隊員と登だけだ。
(城さんに連絡入れたし、もうこうなったら納得出来るまで帰らないっ)
決意も新たにした登は、しかし背後からの気配に全く気付かなかった。
「痛………っ!?」
「進んでるか?」
「城さん!」
背後には温かな食事が乗せられたトレー。
頭に角をぶつけたらしい。
「岸谷さん、ご立腹だったぞ。隊長に報告上がる前に食べておけ」
「あ、晩飯!」
残業を終わらせる事に必死で失念していた食事。
わざわざ運んでくれた城の優しさに大喜びの登である。
「う〜っま!ホント美味しいよ〜」
「仕事の目処はついたのか?」
「ん〜あともう一息?」
画面をざっと見た城は「そうだな」と頷いた。
そんな城を横目に一人前ご飯大盛をぺろりと平らげた登は。
「ご馳走様でした」
手を合わせてそう言った。
「早く終わらせろ」
「え?」
「待っててやるから」
「DVD!?ウソ」
「明日は非番なんだ」
俄然やる気の出た登は一気にラストスパートをかけるのだった。
+++++
登もたまにはセンターでお仕事。
でも登はPCはあんまり得意じゃなさそうだな、と。