手を伸ばしたくなる20題
果てが見えない
登は大変珍しくセンターに居た。

「お……終わらねぇ!」
「ファイト〜」
「頑張って、登君」
「やれば出来るっ」
「できねーっ!!」

パソコンをひっくり返さんばかりの登。

「石川!!先輩に対して失礼だろうがっ」
「わっ!?隊長っ!」

厳しい瞳で登を睨むのは実兄悠だ。

「西脇が出来ない仕事を任せる筈か無い。その信頼に応えろ」
「………はい」

そう。
西脇に任せられたのだ。
しかしやってもやっても終わらない仕事。
実はあと10分で定時。
しかし全く持って上がれそうもない登である。

「食事は採るようにな」

それだけ言うと悠はセンターを出て行ってしまった。

(今日は城さんの言ってたDVD観る予定だったのに〜!)

泣きそうな登は必死にキーボードの上に指を踊らせた。


定時から約三時間。
いつの間にか遅番の隊員達も姿を消し、残るは夜勤の隊員と登だけだ。

(城さんに連絡入れたし、もうこうなったら納得出来るまで帰らないっ)

決意も新たにした登は、しかし背後からの気配に全く気付かなかった。

「痛………っ!?」
「進んでるか?」
「城さん!」

背後には温かな食事が乗せられたトレー。
頭に角をぶつけたらしい。

「岸谷さん、ご立腹だったぞ。隊長に報告上がる前に食べておけ」
「あ、晩飯!」

残業を終わらせる事に必死で失念していた食事。
わざわざ運んでくれた城の優しさに大喜びの登である。

「う〜っま!ホント美味しいよ〜」
「仕事の目処はついたのか?」
「ん〜あともう一息?」

画面をざっと見た城は「そうだな」と頷いた。
そんな城を横目に一人前ご飯大盛をぺろりと平らげた登は。

「ご馳走様でした」

手を合わせてそう言った。

「早く終わらせろ」
「え?」
「待っててやるから」
「DVD!?ウソ」
「明日は非番なんだ」

俄然やる気の出た登は一気にラストスパートをかけるのだった。


+++++
登もたまにはセンターでお仕事。
でも登はPCはあんまり得意じゃなさそうだな、と。


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