昨日見た夢、指先がほんの数センチ。
たった数センチ届かない夢。
「………っ!!」
また届かない。
指先を掠めもせず、掴めない。
「………登?」
その手を掴んでくれたのは城さんだった。
「てが……っ」
「てが?」
「手が届かなかった………っ」
「登!?」
俺が急に泣き出したから城さんはびっくりしてる。
当たり前なんだけど。
それでも抱き締めてくれる優しい腕に飛び込んだ。
見るのは分かってたから、誰かの隣で寝たかった。
なのに今日に限って同室の安藤さんは夜勤。
【城さん。今日安藤さん夜勤なんだ〜コッチ泊まらない?】
【………凄い台詞だな?】
艶やかに微笑う城さんを見た時、言い方を間違えたと気付いた。
思いっ切り誘ってるよこれ!
【シャワー浴びて、待ってろ】
【………っ!!】
凄い声で囁かれた俺は腰を抜かして暫く立てなかった。
でも頭の片隅で。
夢も見ない位、深い眠りを貰えるかもしれないとも思った。
深く深く眠ってた筈なのに。
結局見て、不安がって、泣いて、城さんを困らせる。
昔の夢。
ガキだったから、届かなかった。
こんな事がもう二度と無い様に。
俺は強くなりたい。
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誰しもあるだろう、苦い過去。登も結構そんな過去を繰り返し繰り返し思い出しては後悔しそうなので。あと少し、それが一番心に根深く残り続けそうです。