手を伸ばしたくなる20題
手を繋ごう
「………マーティ?あれ、城ちゃんもどうしたの」

街中で急に立ち止まった、金色の恋人。
そしてつられる様に止まった銀色のパートナー。
この二人は同年代で本当に仲が良い。
犬猿の仲だったのに一体いつの間にと思う。
でも仲が良いのはとても良い事だ。

「ねぇアレク」

いつからだろう?
マーティは俺の事をアレクさんとは呼ばなくなった。
そして呼ぶ声は凛としているのにどこか甘く響く。
それが堪らなく好き。

「どうして手を繋いじゃ駄目なんだ」
「………照れ屋と言うよりもヘタレだ」

可愛い二人からの非難する視線はイタイ。
でもさ、でもさ!

「ここ…街中だよ?」
「知ってる!」
「だから?」
「えっと……ほら、俺達」
「そうだよ男同士だよ!」
「だから?」
「や……なんていうか二人共只でさえ目立つから」
「アレクが一番目立ってるよっ」
「悪目立ち。デカイし長髪だし服のセンスぶっ飛んでるから」

あれ…あれれ?
只でさえ弱いのに金銀仔猫に共闘されたら勝ち目無い……?

「………少しぐらい。恋人らしい事させてくれてもいいじゃないか…」

城ちゃんの居る前で??
と言うかこんな人前で!?

「泣かせるのアレクさん」

城ちゃんの言う通り。
蒼い蒼い瞳はゆらゆら揺れて海の様。
綺麗で綺麗でとても切ない。

「泣かないでよマーティ………」

そして本当に泣きそうなマーティに手を伸ばす事も出来ない俺。

「………そんな…」
「え?」
「そんな顔は反則だ……!帰ろう城!!」
「え?え?」
「全く貴方は……」
「ちょ……城ちゃん?何、マーティ、何処行くの!?」
「うっさいバカ!」
「よしよし」
「もしもし!!?お二人さん、買い物するんじゃないの!」
「バカバカバカ、バカ!!」

早足で歩き出すマーティと手を繋いでこの場を去る城ちゃん。

「って言うか二人が繋いじゃうの!!?」
「そこを突っ込んでる限り貴方はヘタレだと思いますよ」
「どどどどどどどーいうことそれ!?ちょ、待ってって!」

二人の荷物持ちに任命された為。
両肩には大きな紙袋がみっつもよっつも掛かってる。
重みは感じないが嵩張って仕方ない。
これからもうひとつの駅前ファッション雑貨ビルに行く予定は?

………手、繋げば機嫌直してくれるかなぁ?
いや。
いやいや、無理!
無理だそれは無理!
人前で手を繋いでなんて歩けない!
………恥ずかし過ぎる!


+++++
金銀仔猫は対アレクでは最強。
でもアレクの泣き顔の方が強い、惚れた弱み同士。


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