泣かせちゃったな、城に睨まれる。
「泣くなよ登」
可愛い可愛い弟分。
ふわり空気が動いて思い切り抱きつかれた。
髪に頬を擦り寄せられる感覚に苦笑しながら抱き返した。
嗚咽に震える体。
温かな体温。
柔らかな髪。
すべらかな子供みたいな肌。
指先で見るこの世界も捨てたものではない。
ただ万尋さんの顔だけが見えないのが酷く悲しい。
真矢、と。
呼ばれた声はかすれて聞き逃しそうな程弱々しかった。
「ごめんね真矢さんっ。ごめんなさい……っ」
「何も謝る必要はない、登」
「うんっ。うん、ごめん……!」
なぁ登。
お前は何も悪くないよ。
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真矢重体後の話。
なみだあめのすぐ後。
真矢の怪我は登と万尋さんを庇った。