子どもってのは何でもない場所で転ぶ。
それは唐突で、でも必然。
頭が重いしバランス感覚もまだあやしいから。
「………っと」
「真矢?」
“絶対隣歩くなよ!”
そう言い聞かせて出掛けた街中で。
振り返れば真矢と、小さな女の子。
「大丈夫か?」
「うん。おにいちゃんありがとう」
赤と青。
二つの風船を持ったその子は息を切らせている。
「ふたつも風船、良いね」
「ひとつはおとうとにあげるの」
「えらいね」
真矢は頭を撫でるとポケットを探る。
「じゃあ優しい君にプレゼント」
風船の端に器用に飴を結ぶ。
それもひとつじゃない、ふたつずつ。
女の子は頬を染めて驚く。
「ありがとう!」
「風船を放さない様、気を付けてお帰り」
「うん!さよーならっ」
ぶんぶん手を振って歩き出した女の子を見送ってから真矢は立ち上がる。
ずっと目線を合わせる為にしゃがんでいたのだ。
こんなところが。
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緋琉と幼女(若しくは幼児)が好きらしい。
やたら緋琉は子どもにもてそう。
少女の初恋は風船のお兄さんになったと思う。