手を伸ばしたくなる20題
追いかけるのはいつも
【城さん!】

いつも、いつも。
俺の名前を呼んで追ってくる。
柔らかくまるで大切な物の様に俺の名前を口にする。
悲しそうな顔で。
悔しそうな顔で。
楽しそうな顔で。
嬉しそうな顔で。
何度も、何度も、あの人がそうしてくれた様に。

積もり積もった優しさはいつしか愛しさに変わった。


俺の恋はいつもそうだった。

積もり積もった憎しみを感じたあの人にも。
積もり積もった優しさをくれたあの人にも。
積もり積もった愛しさを共有したヤツにも。

いつも少しずつ積もって、積もって、恋になった。
そして全てそれらは時間と共にゆっくりゆっくり消化して。
消えて次の恋へと移る。
自分でも気付かない内に始まって、気付くともう。
終わっている。
恋した人は全て、誰かを愛する人ばかりで。
その想いが眩しくて羨ましくて口にもだせないまま。

でも今は違う。
今度は譲らない、誰にも。
誰かを好きでも絶対に諦めない。
誰かが好きでも絶対に渡さない。
好きなだけじゃない。
恋してるだけじゃ我慢できない。
愛して欲しい、愛してるから愛し返して欲しい。


今までに無い強さ。
自分でも驚くほど、強い願い。


「好きだ」
「え?」
「お前が、好きだ」

甘い瞳が揺れる。
今の関係をなくしたくないからと口にしなかった。
過去の俺とは違う。
今の関係が続く位ならいっそ零になればいい。

「好きだ」

そっと、抱き締めた。


+++++
告白は城から。
登を好きになって初めて分かる、過去愛した人達へと想い。


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