手を伸ばしたくなる20題
たよりない笑顔
そんな顔見せられたら。

「………参ったな…」
「城さん…っ」

本当にささやかなプレゼント。
マーティさんに聞いて知った城さんの誕生日。
何かしよう、絶対にプレゼントを渡そうって決めて。
あちこち探すのも楽しかった。
方向音痴だから結構迷子になったけど………。
穴場的な場所もあったし、方向音痴も捨てたものじゃない。
そんな穴場の店で見つけた。
ブラックレザーにシルバーを編んだ太めバングルと。
同系デザインなのにレザーとシルバーの比率が違う細身のブレスレット。
どっちか凄く迷って、でもどっちも捨てがたくて。
値段は安くなかったけどやっぱりどっちも似合うって思ったから。
ブレスとかしてるとこ見ないし。
装飾品っていったらピアス位。
似合うのにな、ってずっと思ってた。
だから今回プレゼントにして。

“おめでとう”

こんな一言と一緒に贈った。

「………どうしたら良いんだろうか…」

泣きそうな、頼り無い表情でブレスを撫でる城さん。
こんな顔見せられたら抱き締めずにはいられないよ。

「ありがとう……嬉しいよ、登…」

そしてそのまま口の端を歪ませる様に笑うこの人を。

「喜んで貰えて、良かった…」

押し倒す勢いで抱き締める。
でもびくともしない城さん。
それでもいい、こんなに喜んで貰えたら本望だ。
捜し歩いた甲斐もある。
俺は未だブレスに釘付けな視線を無理やり剥がして口付けた。


+++++
城にはシルバーだと思う登。
愛して愛し返してくれた人からの、心からの贈り物に戸惑う城。


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