春15題
ほわほわほわわ
一変した空気。

「悠兄ちゃん!」
「登………もう隊員だろう?だったら俺のコトは」
「隊長!」
「そうだ。プライベートならいつも通りでも良いけどな」

さっきまでの生意気そうな雰囲気は無くなった。
ただ兄が大好きな弟の表情。
笑った顔が良く似てる。
無表情の時も似てるけど。
華やぐという表現が相応しい、華のある兄弟だ。

「逞しくなったね〜登クン」
「アレクさん」
「わざわざロス行ってSPの資格とったらしいよ」
「あぁだから」
「そ。他の訓練校入隊同期より遅いの」

既に弟の方の同期はそれぞれの分野で能力を発揮している三年目なのだ。

「こっち見ましたね」
「………素直なのはお兄ちゃんの前だけかぁ」

ひらひらとアレクさんが手を振っても、
小さく頭を下げるだけで目は睨んでいる。

「かっわいい〜」
「………かわいいんですか、あれ」
「なんか出逢った頃の隊長みたいなんだもん〜」
「隊長?」
「警戒心バリバリというか、毛を逆立てた猫みたいな」

確かにその表現は頷ける。
しかし兄に向かう横顔は背景に花が散ってそうな柔らかい微笑だ。

「似た者兄弟だよ」

まさか、その弟の方に懐かれるとは思いも寄らない過去。


「城さん、城さん、見て!また射撃の的中率上がった!」
「……まだまだだな」

華やかな柔らかい笑顔で嬉しそうに駆け寄ってくる。
徐々に隊員に気を許し始めた登は今では先輩隊員に可愛がられている。
けれど。

「ね、約束!レベル7で的中率85%超えたら買い物付き合ってくれるって言ったよね?」

ここまで懐かれているのは俺位らしい。
真矢さんへの懐き具合も凄いと思うが。

「言ったか?」
「じょぉさぁん〜……」
「冗談だ。仕方ないな」

ほわん、という表現が似合う笑顔を浮かべた登は。
池上さんと本木さんに呼ばれたらしい。

「あとで日程決めよう!今夜遊びに行くっ」
「分かった分かった。早く行け」
「約束な!」


+++++
登JDG独身寮入寮日。
噂の隊長弟を見に来る非番の隊員達に混じった日勤の城とアレク。
にゃんこが懐くまであと三週間。
ラストは懐いてからふた月。


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