痴話喧嘩は他所でやれ!
08:「なっ……自惚れるな!」
今、俺の目の前にある画面の先で、銀色の髪を持つ男はふるふると怒りに震えていた。

「アスラン!! きっさまぁぁぁ〜……よくも抜け抜けと俺の前に顔を出せたな!!」

俺は今、オーブにある自分の部屋で、密かにプラントに居るイザークへと通信をつないでいた。
懐かしいその叫び声に、俺はふっと顔をなごませる。

(変わってないな……イザーク…)

「笑うな! 気色の悪い!! アーティがそっちに行ってるってのは、確かか!!」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」

全てをアルトから聞いているけれど、俺はあえて知らぬふりをした。通信画面の先では、イザークが今にも殴りかかってきそうな剣幕で、その後ろにいるディアッカは苦笑いをしている。

「どうかしただとぉ!? 貴様、アーティに指一本でも手出ししたらブチ殺すぞ!」
「なんで?」
「なっ!」

俺は二人のために、あえてイザークに通信をつないでいる。とばっちりを食らうのを覚悟して。

(このままだと、イザークの性格上…延々と迎えにこなさそうだしな…)

「イザークは、アルトを除隊させたんだろ? ついでに邪魔だって追い払った。だから、アルトは俺のところに来たんだ。それなのに手出しするなとか、虫が良すぎると思わないのか?」
「追い払ってなどいない!! それはアイツが勝手に勘違いをしているだけだ!!」
「でも、泣いてたぞ?」
「!!」

画面の先のイザークの表情が、明らかに動揺した。

(…俺のところに来たときは泣かずに怒ってたけど、その前に泣きはらしたのは間違いないはずだ…)

そして俺は、すぅっと視線の鋭さを強める。

「彼女を泣かせるような奴の傍に、戻すなんてできないな」
「なんだ…と…!!」
「イザークがアルトを傷つけるだけなら、俺が彼女を奪うよ」
「貴様っ!!」

(…嘘だけど。まぁ、イザークにはこれくらい言っておかないと…評議員っていう立場上、おいそれと手出ししかねているみたいだし)

イザークの表情が本気でキレる寸前に変わる。その雰囲気を察してディアッカが通信に割り込んできた。

「ちょっと待て。アスランお前…オーブのお姫さんはどうすんだよ」
「カガリと俺はなんでもないよ。世話になってるだけだし」
「はぁ!?」

(…これも本当は嘘だけどな)

内心の感情を隠して俺はしれっと言い放つ。

「…オーブ時間で今日の日付が変わる前に迎えに来ないと、アルトは二度とイザークの元になんて返さない。…来れるものなら、奪い返しに来るといい……イザーク」
「なっ!! アスラン!! 貴様ぁ!!」
「それじゃあな」


ピッ


そしてイザークが一番怒り狂うであろう台詞を残して、俺はわざと通信を切った。
これでアイツが迎えに来るのは確実だ。怒り狂って殴り込んでくるというオプション付きで。

「時間が空くとこじれるからな…これでアイツは何が何でも迎えにくるだろ」
「ふーん? これまたスゴイ台詞だな。『イザークがアルトを傷つけるだけなら、俺が彼女を奪うよ』か」
「カガリっ…! いつから、そこに…!」

背後からかけられた声に、俺は勢いよく振り返った。

「ずっと居たぞ? なんだか込み合った話みたいだったから大人しくしてたけどな」
「…会議は終わったのか?」
「くだらない会議だ。わざわざ人を呼び戻しておいてふざけてる」
「…そうか。なら、予定通りみんなを迎えに行…」
「アスラン!」

話をそらそうとしたけれど、失敗に終わった。カガリの目を見ればわかる。…彼女は多少なりとも今の嘘に、傷ついた。

「…本当は、イザークって奴とアイツが付き合ってなかったら…アスランは…」
「…そんな事はないさ。…俺はアルトもイザークも、仲間だと思ってる」
「…ホントかよ? その割にはアイツに優しいけど?」
「ああ、今のはイザークを迎えに来させるための嘘だから。それにイザークともだけど、アルトとはアカデミーからの付き合いだし。それなりに性格も好みも把握してるつもりだ」

俺はカガリを抱き寄せて、ぎゅっと力を込めた。

「ちょっ」
「ヤキモチ?」
「なっ……自惚れるな!バカ!」
「くくっ……はははっ…」
「笑うな!! もぅっ! さっさとアイツら迎えに行くぞ!」

照れ隠しのパンチをけしかけてくるカガリの手をとって、俺たちは静かに部屋を出て行った。


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