痴話喧嘩は他所でやれ!
04:「これでも元評議員だぞ?」
「……というわけで、悪いんだけどアスラン。ラクスのとこまで案内してくれない?」
【……また壮絶な事になってるな……】
「忙しいのに、ごめん」

私は通信画面の先にいるアスランに平謝りした。
アスランはひとつ苦笑いをすると、『仕方ないな』と了承してくれる。

【俺もあまり時間はとれないけど…】
「うん、わかってる。なんなら、道を教えてくれれば一人でも…」
【そんな事、必要ない!】

私がアスランの仕事を思って妥協案を提案していたところに、威勢のいい声が割って入ってきた。

【カガリ! お前、会議は…!】
【つまらんから、フケた】
【なっ!!】

アスランの頭に角が生える五秒前。けれどオーブの仔獅子ことカガリ・ユラ・アスハは、慣れた仕草でアスランの肩をたたいて笑顔をみせた。

【大丈夫だ。ある程度は終わってたから】
【そんな問題じゃないだろ! わかってるのか!?】
【はいはい。それより、お前!】
「はい?」

二人でもめている状況を黙って見ていた私に、カガリはついっとアスランを押し退けて通信画面に現れる。

【そのイザークって奴の頭が冷めるまで、私が責任を持って観光案内してやるぞ!】
「…え?」
【オーブは綺麗なところがいっぱいあるからな! ラクスのところに行くのもいいけど、ホテルも手配してやろうか?】
【カガリ! そうやってサボろうと!】
【堅いこと言うなよアスラン。お前の元同僚が涙してんだぞ? 放っておけるか!】
【自分の立場を考えろ!! ほいほい旅行なんか…】
【だーいじょうぶだって。弟に会いに行くのに、何か理由でもいるのかよ?】

(…これが、オーブの代表首長かと思うと頭イタイなぁ…アスラン、お疲れ)

私は画面の先で喧嘩を繰り広げる……いや、一方的に怒っているアスランに同情した。

「まぁ……私はなんでもいいんだけど…観光は、いらない」
【そうか? 気が向いたら言えよ。とりあえずラクスのとこには私も行くから。あ、アスランもオマケでつけてやるよ】
「あ、ありがとう…」
【って、ちょっと待てカガリ! そんな…!】
【じゃあ、すぐに来いよ! 待ってるからな!】


ぶちっ


そう言い切ったカガリは、通信をぶったぎってしまった。後ろでアスランが頭を抱えていたけれど、私は見なかったことにしておく。

「……あー……アスラン……ほんと、ごめん」

とりあえずだが、最初に会ったらもう一度謝っておこう。そう心に決め、通信機から離れてリビングに戻ると、笑顔全快のエザリア様が居る。
手元には、とても大きなスーツケース。

「…すいません……その荷物は?」
「女子は支度に手間がかかるかと思ってな。すでに用意しておいたぞ」

(…その行動力の早さは、さすが母子ですね、エザリア様……)

私は引きつった笑みを返しつつ、エザリア様に感謝する。

「これが、オーブ行きのチケットだ。今日の夜に出る最終便だから、乗り遅れのないようにな」

(……早すぎませんか。というか、軟禁状態のあなたがどうやってチケットの手配を…)

その疑問が伝わったのか、エザリア様はウィンクをとばして私の肩を軽くたたく。

「これでも元評議員だぞ?」

(……それは、どうなんでしょう……)

「あ、ありがとうございます」

もはや苦笑いしか、私はできなかった。

「なに、気にするな。ゆっくり羽を伸ばしておいで」
「はい…」
「イザークの事は、私からも謝ろう」
「いえっ!! そのような…!」

エザリア様が頭を下げるので、私はあわてて彼女の傍により、顔をあげさせようとする。

「イザークの気持ちも……わからなくは……」
「いや、完全にアイツが悪い」
「えっ」

拳を振るわせて顔を上げたエザリア様は、遠く(おそらくイザークが居る軍本部あたり)をにらみつけている。

「怒れ」
「は……はぁ……」
「あのバカが万が一追いかけてきても、怒って追い返しなさい」

(それも、どうなんだろう……というか、追いかけてなんてこないと思いますエザリア様…)

彼の立場を考えると、おいそれと交渉中の国になんて来れるわけがないのだ。

「追いかけてこないなら、アイツと結婚なんてやめて、私の養女になりなさい」

ニッコリと笑顔で言い切るエザリア様。

「え、あの……イザークと兄妹ですか?」
「まさか、アイツは我が家の敷居などまたがせん。勘当する」

(えー…!!)

「この家では私がルールだ」

ハッキリと言い切った彼女の顔は、真剣でした。


そうして私はエザリア様の強い勧めで、オーブへとその日のうちに旅立つことになってしまった。


NEXT→

(おい、イザーク……なんでこのタイミングで除隊許可証出すわけ?)
(前々から考えていた!少し速まっただけだろうが!)
(……はぁ……)
(ため息なんてついてないで、さっさと仕事しろ!)


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