◆【本編02話:ん……ちょっとだけ】より
ヴェサリウスに搭乗する少し前、ラスティと合流して、アスランとニコルを発見したあたりから。
「あぁ…ほら、噂をすればってやつ。アスランとニコルだなありゃ」
私よりも視界が高いラスティは、すぐに二人に気づいたようだった。私も遅れて二人を認識すると、少し嬉しくなって走り出す。
「ホントだ! アスラーン! ニコルー!」
そして走り出した勢いそのままに、私はニコルへと背後から飛びついたのだった。
「アーティ!?」
「おっはよー! って…あれ?」
しかし何故だか目測を誤り、私はニコルの隣に居るアスランに抱きついてしまっていた。
「……あれぇ?」
「…アーティ……どうやったら俺とニコルを間違えられるんだ…?」
「さぁ…? 私にもわかんない」
落ち着き払っているアスランと私だが、ニコルは驚愕に顔を引きつらせ、ラスティは大爆笑している。
「あっはっは!! アーティ、最高っ!!」
「もぉー、そんなに笑わないでよラスティ…」
「だけど……はぁ……そろそろ離れた方がいいと思うな…」
笑いを一生懸命堪えながら苦しそうに発言するラスティ。主語を省いた物言いに、事の真意が理解できなかった。
(そりゃ、NG出したから、やり直しだろうけど…)私が不思議そうな顔をしているせいか、ラスティはちゃんと説明してくれる気になったようだ。笑いすぎて溢れた目じりの涙をぬぐって上を指差す。
「だって、もうすぐ…」
「貴様らいつまで抱きついているつもりだ!! アスラン!! さっさとアーティから離れろぉ!!」
「ほらね」
「あぁ、なるほど」
ヴェサリウスの搭乗口から下に居る私たちに向かって叫ぶイザークを見て、私は苦笑いを浮かべながらアスランからそっと離れた。
CUT!
(大丈夫だよイザーク、私、浮気するつもりないし)
(当たり前だ! ニコルに抱きつくのでさえガマンしてやってるんだぞ!)
(じゃあ、今のうちに甘えてあげようか?)
(!!)