第11章 嘆きの華
72:「その時は………彼も、討つ」
「ん? ラクス・クラインらが……? ふんっ、こざかしい事を…構わぬ。放っておけ! こちらの準備も完了した」

(…プラントに放たれた核…アスランたちが消した…か…)

前線にはイザークも出ている。

(……イザーク……アスラン殴れたかなー……?)

緊張感のカケラもない事を私は考えながら、ジェネシスの軌道上から待避していくザフト軍を眺めていた。
その間にも、ジェネシス発射の準備は瞬く間に終わっていく。

「思い知るがいい…ナチュラル共。この一撃が、我らコーディネイターの創世の光とならんことを! ……発射!」

そうして、Nジャマーを搭載した…核機動の最大ビームは…放たれた。
機動上の全てのものをなぎ払いながら、なおもジェネシスは進む。

「…………」

あちこちから、呆けたような嘆息しか聞こえてこなかった。
一発目は、ただの威嚇だ。ジェネシスの威力を見せつけるためのものでしかなく、ついでに軌道上に散らばる地球軍も一掃できればよかった。
放たれたビームがとてつもない威力だという事を、使いものにならなくなった砲針が物語っている。ちなみに、一撃目は最大出力の60%しか出していない。

「さすがですな…ザラ議長閣下。…ジェネシスの威力…これほどのものとは」
「…戦争は勝って終わらねば、意味がなかろう」

兄様がとりあえず議長のご機嫌を取りに会話している間、私は地球軍の動きを見ていた。

(…まあ、どんなバカな指揮官でも、こんな状態なら一時待避して……作戦の立て直しって感じかな……次は…私も出ないとね…)

予想通り、彼らは一時宙域を離脱し、体勢を立て直している。
するとザラ議長は、ザフト軍の全回線をオンラインにして立ち上がった。

「我らが、勇敢なるザフト軍兵士の諸君! 傲慢なるナチュラル共の暴挙を、これ以上許してはならない! プラントに向かって放たれた核…これはもはや…戦争ではない! 虐殺だ!!」

(……そのプラントに向かって放たれた核を横目で見ながら、ジェネシスの準備をしろと平然と命令をしておいて…よく言うよねー……)

私は先ほどの議長の様子を思い出していた。見ている限り、焦る様子も何もなかったように思う。落ち着いているとか、軍を信頼しているとか、そういうわけではない。
…落ちたら落ちたで、大義名分が増える。そう感じた。

「そのような行為を平然と行うナチュラル共を、もはや、我らは決して許す事はできない! 新たな未来…創世の光は我らと共にある!」

(創世ね………このままだと貴方は………創世どころか、終焉の道しか選べませんよー……)

チラッと兄様を見ると、痛快だと言わんばかりに口角をあげていた。

「この光と共に今日という日を、我ら、新たなる人類コーディネイターの輝かしき歴史の…始まりの日とするのだ!!」
「うぉぉぉおおお!」

あちこちから、歓声が聞こえる。ザフトは自由だ。そう言っているようだった。
議長は宣言を終えると、補給と整備が終わりしだい、再び開戦すると言い残して一時退去した。
その様子を目で追ってた兄様は、そっと私に近づく。

「……アルテミス……ジュール議員が居る防衛線で、機体の整備をし、開戦と同時に今度は出撃を」
「……狙いは…?」
「……好きにしなさい」

私が小さく返すと、兄様は軽くかがんで私の耳に直接ささやいた。
肩をぽんとたたいて、ジェネシスの整備をしている人の隣に移動しようとする。その腕を取って、私は誰にも聞こえないように少し離れた場所へと兄様を導いた。

「…どうした」
「…兄様…約束して」
「…何を?」

私は兄様をまっすぐに見て、小声で話す。

「…全て……全て、私が倒す。兄様の分も私がやる」
「…アーティ…」
「だから、アレには乗らないで」

私がそう言うと、兄様は苦笑した。

「君が全てを…請け負うと?」
「本気でやる」
「…アスランも、ディアッカも?」
「…討つよ…」

兄様は試してるのだ、私の気持ちを。

「場合によっては……イザークも、あちらに行くかもしれないのだぞ?」
「………その時は………彼も、討つ」

(兄様の邪魔をするなら、容赦しない…たとえ、誰でもあっても)

さきほど言われた答えを、私は出した。
私の真剣な眼差しに、兄様はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「期待しよう……ルナモードの使いどころは…わかっているね?」
「…はい」

そうして今度こそ私は、兄様に敬礼をして部屋を出ていった。


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