第6章 優しい戦士
45:「戦況はどうなっているんです?」
【いくぜー!!】
【うぉぉぉぉ!!】

ディアッカとイザークが、今度はちゃんと隊列を組んでいる。
日が明けてからすぐに足付きを襲撃した私たちは、ニコルが欠けた四人での攻撃となった。

「ディアッカ! スカイグラスパーが出たら、まずは船尾を狙って撃ち落として!!」
【なんでだよ?】
「ちょろちょろされたら、ウザイからだよ! 足付きを落とそうとしてたら奴は勝手に飛んでくるから、足付きを狙ってると思わせてすぐさま照準を奴に! 遠距離はキミしかいないんだから、しっかりして!」
【なるほど、今日のお前は、一段と怖ぇな!】
「うるっさい!! さっさとしろぉ!」
【ヒュー。その口調、イザークにそっくり】

軽口を叩きあいながらも、私たちは確実に足付きを攻撃していった。
ストライクも艦上から執拗なビーム攻撃を繰り返し、なんとか守っているような状態。攻めと守りでいうなら、攻めの方が圧倒的に有利なのは言うまでもなかった。

今日は、四人のコーディネイターが全力本気で向かっている。落ちないはずはない。
しかも怒りに任せて連携も取れているのだから。

「そろそろ決着つけようよ……大天使様!」

足付きの艦上にある砲台を数個撃破し、執拗な弾幕をはれないよう、さらに後部に回り込んでミサイル発射口を破壊した。
ディアッカも、スカイグラスパーをちゃんと遠ざけているし、今、艦の守りは手薄だ。

【許せないんだよ……お前らぁぁ!】

今度はイザークがストライクを蹴り飛ばした。

(…散々、踏みつけられたり蹴られたりしてたもんね、少しくらいお返しになったんじゃないかな)

その光景を傍目で見ながら、私はアスランと連携を取って艦を沈めにかかる。
アスランのスキュラが火を噴いて、足付きの左機関部を損傷させた。
その間に放り投げられたグゥルを私が拾って、アスランに蹴り返す。彼はちゃんとグゥルに着地して、再び攻撃を再開した。

【なにぃ!?】
「え!?」

イザークの驚いたような声が聞こえて、私は慌てて彼を見た。

さきほどまで有利だったのに、ストライクに右足をビームで貫かれて小爆する。右足を失った彼は、グゥルに乗っていられなくなって海へと墜ちていった。その間に、反撃するのも忘れない。ちゃんとイザークはストライクの武器を狙ってビームを放ち彼の銃を破壊すると、叫びながらまた墜ちていった。

「…また墜ちたよ…何回海に入ったら気が済むんですかね、あの子は!」
【イザークの回収は母艦に任せて、君は足付きを!】
「了解!」

そうしてアスランから離れると、彼はストライクと対峙して、グゥルをわざと蹴り放った。そしてすぐさまビームでグゥルを狙い、ストライクの目の前で爆発させる。

「うっわ、えげつな!」

本気のアスランを見た気がした。
彼はストライクを巻き込んで、小島に墜ちていく。

「さて、邪魔なストライクも、スカイグラスパーも居ない事だし? 遠慮なく!!」

そう思って突進すると、もう一機、スカイグラスパーが出てきた。

「もう一機!?」

(……これは、あの時、ニコルの邪魔をした方……!)

アレがなければ、ブリッツはストライクに片腕を落とされるような事はなかったのかもしれない。

そう思ったと同時に、私はグラスパーの軌道を遮るようにグゥルを動かしていた。

「ちょっと、邪魔なんだよね!」
【うっ!! うわぁぁぁ!!】
「……子供?」

そんな事はどうでもいい。今、戦場に出てきたという事は、それなりの覚悟があるという事だ。
私がその一機を狙おうと銃を上げると、下にいる足付きから主砲をプレゼントされてしまった。

慌ててグゥルの軌道をそらすも、銃が主砲をかすめて溶解してしまう。

「ちっ…!」

その間にグラスパーはストライクを追って小島の方へ行ってしまった。

「やっぱ、どっちも邪魔だよね……!」

おそらく、初めから出ているグラスパーがフラガ機なのだろう。操縦の仕方が全く違う。
私はグゥルの出力を最大限にあげて、足つきから放たれる弾幕を最低限に抑える。

「このぉぉ!!」

そして足付きを追い越しざま、グゥルだけを蹴り飛ばし、足付きの主砲に激突させた。


ドォォン!!


「ざまぁ!!」

そのまま体勢を上向きにさせて、ビームサーベルを取り出す。そして勢いよく投げた。

「左は全部、止めさせてもらう!!」

最初に攻撃した砲台の真下、エンジン部にサーベルがささって大爆発する。

「くっ……! ああぁぁぁ!!」

エンジン部の一部とはいえ爆発させたその爆風で、ゼロは海面へと急激に近づいていった。


ドォン!ドォン!


諦めない足付きからの攻撃は、エネルギー切れでフェイズシフト装甲がダウンした機体では防ぎようがなく、ゼロは煙をあげながら水柱を高々とあげて吸い込まれるように墜ちていった。





そして私は、医務室で目が覚めた。

「…! ここは……!?」
「艦の医務室。海に沈んだゼロの損傷具合から言って、君のその怪我は奇跡といっても良い」
「……先生……」

よく見ると、私は頭と右腕に包帯を巻いて、特に右腕はギプスで固定されていた。

「頭は、軽く切っただけだろうが、本国に帰ったら検査をしなさい。右腕は骨にヒビが入っている。しばらくMSの操縦は控えた方がいいだろう」
「そんな事より……戦場は……足付きは!?」
「こら、ちゃんと寝て……ああ、もう!!」

私は止める医師の言葉を最後まで聞かずに、医務室を飛び出すと、ブリッジへとダッシュした。

「失礼しま……」
「不明……? 不明とはどういう事だ!?」

ブリッジに入ると、艦長とイザークが言い争いをしていた。いや、正確に言うと、喧嘩越しなのはイザークだけだけれど。

「イザーク!」
「ジェニウス! 貴様、寝ていろ!」
「…それは、そっくりそのままキミに返す。…艦長、戦況はどうなっているんです?」

私は、イザークの相手を適当にすると、しっかりと艦長の目を見て聞いた。

「……君もか……いいか二人とも、詳しい状況はこちらもわからない」

ずっと潜水していた母艦が戦況をつかめなくても仕方ないかもしれないが、艦長はできる限り丁寧に説明してくれた。

「まず、バスターとの交信が途切れ、やがて大きな爆発を確認した後、イージスとの交信も途切れた。ついでにゼロとの交信も途切れた時は、海に墜ちているのがわかっていたから回収したよ」
「…ありがとうございます」
「二人からのエマージェンシーは!?」
「…どちらからも出ていない…」
「えっ!」
「そんな……!」

信じられなかった。二人が……あの二人が、行方不明などと。

「ストライクは!」
「足付きは!?」

私とイザークが同時に質問する。
艦長は落ち着いた様子で、私たちを宥め、順番に答えてくれた。

「足付きは、ボズマン隊が追撃している」
「そんなバカな…!」
「ストライクは、こちらではわからない」
「すぐに……すぐに艦を戻してください艦長!」
「あの二人がそう簡単にやられるか! だてに赤を着ているわけじゃないんだぞ!!」

今回は、私も珍しく艦長に異議を申し立てた。

(だって、信じられないんだもん!)

だが艦長はため息を吐いて私たちを見ている。

「ならば……状況判断も冷静にできるはずだがね。我々は帰投を命じられたのだ。捜索には別部隊が出る」
「だがっ!!」
「オーブが動いているという報告もあるのだ…」

なおもイザークは諦めない。私は声に出さないけれど、視線は諦めていなかった。

(この帰投命令は……たぶん、兄様からのだろうけど……でも、このままじゃ帰れないよ!)

「わかってもらえんかな…」

『本当にやっかいな国なのだよ』と、冷たく言い放つのではなく、どちらかと言えば諭すように優しく言う艦長に、これ以上、私たちは意見を言えずに黙ってしまう。

「この帰投命令は、先ほども言ったがクルーゼ隊長からの命令だ。君たちは軍人として、今、何に従うべきか……赤を纏うならわかるはずだね?」
「「……失礼しました……」」

こうなってはもう異議も唱えることができない。
そうして私たちは黙ってブリッジを後にしたのだった。


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