第4章 砂漠の虎
31:「あのおバカ…」
「足付き、明るい場所で見るとあんな感じなんだねー」
【余裕かますなアルト! ビームの減水率が高すぎる……大気圏内じゃ、こんなかよ!?】
【くっそぉ……この状況でこんな事をしていられるか!】
「え!? イザーク!?」
【イザーク!】

とりあえず大人しく艦上についていた私たちだったが、イザークは辛抱がたまらずバーニアをふかして艦から離れてしまった。

「あー……やっぱイザークの導火線は短いよ」
【アイツ……俺たちだって我慢してるんだぞ?】
「……我慢しなくてもいいんじゃない?」
【何? って……さっきから何をしてるんだアルト】

そうディアッカに突っ込まれるくらい、私の手はただいまお留守だ。正確に言えば、攻撃の手がお留守なのだが。

「運動パラメータの設置圧とビーム照準を熱対流に合わせて変更してんの。あんまりややこしい事言わないでよ、戦闘中に書き換えるのしんどいんだから」
【はぁ!? おま、この状況で!?】
「この状況だから、必要なんでしょ!」

私たちはついさっき砂漠の虎と合流した。それから数分も経たずに戦闘だ。当然、機体の設定もままならない。
宇宙用の私たちの機体では、砂漠というこの地形に合わせた戦い方はできないのだ。

「バルトフェルド隊長が、何で私たちをレセップスの艦上に配置したと思ってんの?」
【はぁ?】
「使えないからだよ! バグゥの高速戦闘にも追いつけないってのは、建前! 私たちの機体は、地上に合わせた設定をしていないから、ね!」
【くっそ!!】

私が画面に集中していると、横からのミサイルに一瞬反応が遅れた。

「やば!」

そこにディアッカが機体を割り込ませて、かばってくれる。

「ディアッカ!?」
【さっさと書き換えちまえよ! 終わったらデータ流してくれんだろ?】
「…ちょ、……それ、マジ?」
【その間の攻撃と守りは、俺がしてやるから】

ディアッカはニヤッと笑うと、バスターの砲撃を強めた。そして文字通り、私の機体を背にしてかばうような姿勢をとる。

「交換条件…ね、まぁいいよ。どうせ後で流すつもりだったし……でも」
【でも?】
「イザークに流すのが先。たぶん今頃は……『くっそぉぉ!なんだコレは!?』…とか怒り狂いながら砂漠の砂に足を取られてるかもだから」
【ああ……あり得るな…】
「でしょ?」

そう言いながらも、私の手は止まらない。次々と運動パラメータのプログラムを開きながら書き換えていく。流石に、ちょっと時間がかかるのは仕方ないって事でディアッカに守ってもらう他ない。

【くっそ、いい加減に墜ちろ!!】
「あ、ダメ! ディアッカ! その軌道は…!!」
【ああ?】

ディアッカが放った砲火で、地表にあるガスか何かの建物にひっかかって動けなくなっていた足付きが動けるようになってしまった。

「ばっか! 何してんの!!」
【マジかよ!】
「動けるようにしてどうすんの!」
【知るかよ! ってか、ビームの標準が合わねぇんだからさ】
「もぉ! やばいって、逃げて!!」

足付きから放たれた主砲は、レセップスに直撃してしまった。その勢いでレセップスが沈んでいく。

【おいおいおいおい、何が砂漠の虎だよ?】
「いや、アレは若干キミが悪い気がする」
【俺のせいか!?】
「少なくとも、足付きが動けるようになったのはね…」

私たちは、レセップスから慌てて降りて砂漠に着地した。後方ではレセップスが黒い煙を吐き出しながら斜めに沈んでいくのが見える。

【アルト、まだか!?】
「もう、ちょっと……だから大人しく待て!」
【うお! 沈む!】
「砂地なんだから当たり前でしょ! もぉ、大人しくしててよー!」

とか言いつつ、私も片足が埋まっている。

【こりゃ、マズいぜ……くそぉ……!】
「思ったよりやるよね、つか、イザークどこだろ?」
【探すか】
「歩いて…ね。砂の設置圧だけでも先に送ってあげる」
【さんきゅ】

そして設置圧だけでもバスターにデータを転送し終えた時だった。


ドォォォォン!!


「え!?」
【あちゃー……アレは隊長機……ラゴゥだったっけ?】
「うっそ、大破!?」

砂漠の虎が大破。という事は、おそらくストライクがやったと思われる。

「…彼も、砂の設置圧と熱対流の設定は終わらせたわけだ…」
【あ?】
「ううん……何も?」

彼も私たちと変わらないコーディネイターなのだから当然かもしれないが…そんな時間はどこにあったのだろうか?

(何回、戦闘を繰り返した? バルトフェルド隊長は、一回……って言ってなかったっけ。直接対決したのは)

もはや、流石としか言いようのない。そういえば彼はヘリオポリスでもストライクのデタラメな初期OSを書き換えていたはずだ。ミゲル先輩との戦闘中に。

「やればできる子……ね、やっかいだよソレ」

私はアスランの言っていた言葉を思い出しながら苦笑した。当初思った通り、彼はコーディネイターの中でもかなり優秀な方らしい。

「あ、イザーク発見?」
【あー……やっぱ片足……いや、両足埋まってんな】
「……あのおバカ……」

はぁ………と私はため息を吐きながら、イザークを回収する事にした。


END

(おい! 戦闘はどうなっている!?)
(終わったよ。ザフトの負け)
(何ぃ!? お前たち、何をしていたぁ!?)
((ソレ、そっくりそのままお前(キミ)に言いたい))


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