第4章 砂漠の虎
25:「っていうか、アレ民間人」
「私も、撃ち落としておかないとね!」

すり抜ける間、敵戦艦の機関部を狙い撃ちする。その時、ようやくストライクが足付きから出てきた。

「やっと来た!」
【手を出すな! アレは俺の獲物だ!!】
「イザーク!?」
【この傷の礼だ………受け取れぇぇぇ!!】

出たと思ったらイザークがさっそく取り付いた。ディアッカはモビルアーマー……ムウ・ラ・フラガのMAに取り付いている。

「ディアッカ、距離取って!」
【ああ!】

遠距離戦を得意とする彼の機体では、近距離戦は難しい。私と連携を取りながら、なんとかいなしていくしかないのだ。奴からの攻撃もあるが、足付きや地球軍の母艦からの攻撃が来るので、状況はかなり厳しい。

【くそ……時間がないんだ……とっとと墜ちろ!!】
「ディアッカ! ナイス!」
【ヒュー! グレイト!】

彼は私の後ろにあった敵の戦艦を撃ち落とす。残すところ後一つ……母艦にあたる戦艦を落とせば、艦隊は崩壊する。

「地球の重力に注意してね!」
【ああ!】

私たちが足付きに取り付こうとすると、メビウスが邪魔をする。そのやり取りに苛立ってきたその時…視界をよぎっていったヘロヘロの戦艦。

「え……ガモフが……!」
【なにっ?!】
「差し違えるつもり!?」

ガモフが単身、艦隊の弾幕の中を突っ込んできた。すでに地球の重力に引かれて、コントロールが定まっていない。その中で、ガモフは尚も敵の母艦に攻撃をしかけていた。

【くっ……ガモフを墜とすわけには……ぐあ!!】
「ディアッカ!!」

ガモフに気を取られている間に、ディアッカの機体、バスターは次々と被弾していった。

【くそ……重力が……!】

そして大きくぐらつかせた姿勢で、地球の重力圏に捕らわれてしまう。

「このぉぉ!!」

私はガモフを援護するように、敵の母艦にビームをあびせる。ついでにメビウスにも牽制を忘れない。

「ガモフが…そんな…!!」

だが、私の援護はむなしく、ガモフは大きな煙を上げて大破してしまった。

「…逃がさない……ムウ・ラ・フラガ!!」

最後の一撃をくれたのは、メビウス。お返しに私も敵の母艦を沈めた。そして私はメビウスを追うように自ら降下していく。

【……アルト!! ……めです……もど……】
「よくも…ガモフを!!」

電波障害のせいで聞き取りづらい通信の先では、おそらくニコルが私を止めているんだろうけれど。

「…これは、譲れないよ…」

イザークは未だにストライクと地球の重力に引かれながら交戦している。まだイケるはずだ。

「ディアッカ! 降下準備しときなよ!」
【アルト!?】
「もう、コントロール利かないんでしょ!」

そうディアッカに通信を繋いで、私はさらに降下した足付きを追う。
バスターは、メビウスに負わされた損傷のせいで機体コントロールが利きにくいようだった。しかも姿勢を大きく崩されて更に地球の重力に引かれ続けているのだから、尚のこと降下はまぬがれない。

「足付き……ただで降下できると思わないでよね!」

足付きの機関部に狙いを定めた瞬間、イザークが後ろから衝突してきた。

「きゃぁぁぁ! ちょっ! イザーク!?」
【ちっ! 邪魔だジェニウス!】

(いやいや、邪魔って! 今、邪魔したのは確実にキミでしょ! しかも、狙いは逸れるし、私の機体まで地球の重力に捕らわれ過ぎて、もう戻れないじゃないの!)

だが、イザークは私の機体をクッションにして、尚もストライクを狙い撃ちしている。すると、イザークの乗るデュエルとヤマト少年の乗るストライクの間に、すでに崩壊した敵母艦の脱出用シャトルが落ちてきた。

【くっそぅ……! よくも邪魔を……!】

イザークは、ストライクとの間に割り込んできた形になるシャトルがお気に召さなかったようだった。戦場で高ぶった彼の思考回路は、冷静な判断を削いでいく。

(…この…シャトル……)

私は、シャトルの窓から見える画像をアップに解析する。そのために少しだけ降下のスピードを上げた。

(…これは……!!)

「民間……人……?」

どう見たって幼児だと思われる年齢の女の子が窓に手をついてコチラを心配そうに見ていた。

「…!! ヤバイ!!」

今のイザークに、アレが判別できる冷静さがあるとは到底思えなかった。今なら邪魔をされた感情も手伝って、彼は引き金を引いてしまうだろう。

「イザ……」
【逃げ出した腰抜け兵がぁぁぁ!!】

(あぁ、遅かった!? っていうか、アレ民間人……!)

言葉と同時に、デュエルのビームが光った。ストライクが慌ててこちらに突進してくる。私の方が近かったから、私も何とか阻止しようとしたけれど、間に合わなかった。そして彼はシャトルの爆風にあおられて、急速に地球へと墜ちていく。
私が確認できたのは、そこまでだった。

「きゃぁぁぁぁ!!」
【アルト!】
【くっ!!】

何故なら、シャトルの近くに居た私も爆風の煽りを受けたからだ。
ゼロも、ソレに乗っている私も、ストライクと同じとはいかずとも急速に地球へ降下していく。

【捕まれ! ジェニウス!!】

最後に聞いた言葉は、イザークの声だったような気がした。


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(イザーク! お前、ちょっとは冷静になれよ! 仲間巻き込んでどうすんだ!!)
(うるさい! ちゃんと追いついただろうが!)
(アルトは完璧に気を失ってんじゃねぇの、これだと降下の準備はできねぇだろ!)
(く!! 俺が抱えて一緒に降下する!)
(マジかよ…)


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