第3章 親友との別離
17:「はぁぁぁぁ?!」
ほどなくして、第一戦闘配備となり各員出撃する。
私は、ここに来てようやく奪取した機体、ゼロに搭乗し戦闘に参加する事ができたのだった。

「アルテミス・ヴァル・ジェニウス、行きます!」

発進する機体の中で高ぶる感情を沈めていく。

(緊張なんかしない。私は、ただ……兄様を守れたらそれで良いんだから)

それが、私の全てなのだ。

「アスラン・ザラ、出る!」

遅れてアスランも出撃する。
追加された他のパイロットたちからも「新型機体の性能を見させてもらう」と期待もされているので、手は抜けない。
私たちは隊長の言葉通り、主力となって次々と戦艦を攻撃していった。

「この…ちらちらと!」

地球軍の艦隊からモビルアーマーが大量に出て来て、行く手を邪魔するが、かすりもしない射撃をノロノロ発射されても、うっとうしい事この上ないだけだ。
大した性能もないのに数だけは多い。私はイラつきながら確実に撃ち落とし、その数を減らしていくのだった。


ピピッ!


「何!?」
【足付きだ!】

アスランが、例の足付きをいち早く発見して、入電してくる。

「やっとお出ましってわけ! ……アスラン!」
【どうした、アルト】

足付きからモビルスーツが発進したのを確認すると、私はアスランが乗るイージスだけに専用チャンネルを繋いで通信した。

「命令は撃破だよ」
【!】
「だけど捕獲できるなら……やってみなよ」
【アルト……君は…】

アスランは驚いた顔をして、私を見つめ返してくる。
今なら、邪魔は入らないはずだ。イザークたちが居たら、こんな悠長な事をしていられるはずもないのだから。

「他のうっとうしい奴は、私が代わってあげるよ! …今回だけね!」
【……ありがとう】

そう、今回だけだ。私だって本音を漏らせばストライクの機体を捕獲して欲しい。

(……新型機体のデータ、重要な部分は万能型機体だと言われているストライクに搭載されてるみたいなんだもん)

ぜひともソコは採取しておきたい。捕獲できるのであればソレにこした事はないのだ。
兄様のためになりそうなネタが増えるのは喜ばしいことで、さらにアスランの悩みの種が減ることにもなる。

(でも、兄様だったら…)

「やられそうになったら、迷わず撃破するよ!」

「できぬようなら、撃墜しろ」ぐらいは、言いそうなのでここはアスランに釘をさしておかねばならぬ所だ。

【ああ……これは、また高くつくな】

その言葉に目を丸くしたのは、私。
アスランが冗談を言うなど思ってもみなかったからだが、この分だと特に心配する必要もないようだ。

「じゃあ、レアチーズにクッキーつけてね!」

そんな冗談を言い合って二人で笑いながら通信を切ると、私は襲ってきたモビルアーマーの一つを撃ち落とした。

「ほらほら! ちんたらしてると的にするよ!」

他のパイロットたちの援護にも回りつつ、確実に戦艦を撃沈させていく。その中で先行する赤のモビルアーマーを発見した。

「見つけた……! ムウ・ラ・フラガ!!」

機体を旋回させて、モビルアーマーに向かう。すれ違いざまに私の機体、ゼロのビームを数弾あびせる事に成功した。
赤いモビルアーマーを撃沈させるとは行かずとも、各部に損傷は大きいはずだ。

「この前の戦闘のお返しだね」

このまま足付きに戻れるようなら、戻ればいい。機関部を損傷しての再出撃は難しいだろうから、ストライク捕獲のための時間稼ぎぐらいにはなりそうだと思った。

「撃ち落とすのは、兄様の役みたいだから…私は我慢してあげる」

そっと呟くと、私は機体をさらに旋回させて戦闘に戻る。レーダーを確認すると、アスランは例のストライクと交戦中だった。中身もコーディネイターなら、純粋にパイロットの腕勝負といったところだが…

「……何してるの、アスラン…!」

アスランに肩入れするのは、私の独断だ。
後々、兄様の為になる事があるとはいえ、命令違反がバレて良いという訳でもない。

「兄様にバレる前に捕獲してよ〜!」

私は焦れったい気持ちを隠しもせずに、モニターの望遠を最大にしてイージスとストライクをカメラに捉える。

「…やっぱ…難しいか…でも…」

こちらがフォローするのも、やはり限界というものがある。今ここにイザークたちが居ないからできる事だけれど。

「…後は…主力戦力も、足付きとあの指令艦だけ…」

ストライクはアスランに任せる方が良い。それならば先に足付き以外を落としておこう……そう思って戦艦に近づいた途端、ヴェサリウスから主砲が放たれた。

「うっわ!!」

慌てて主砲の弾道から待避すると、真っ直ぐに近くの戦艦を貫いて大爆発を起こしていく。

「え……ちょ、これ避けるの前提で撃ってる…よね!? もうちょいで当たるよ!? 主砲だよ!? 当たったらいくらフェイズシフト機能あってもヤバイよ!?」

ギリギリのところで避けた自分を内心で褒めながら、当たった時の事を考えて、ぶるっと背筋が震える。
味方を巻き込むような撃ち方をしてきたヴェサリウス。いったい何を考えているのかと考えを巡らせては見たものの、その艦を、いや軍を指揮している人物の事を思って、私はため息を吐き出した。

(…でも、兄様なら、味方の主砲に当たるバカはいない…とか言って平気で撃ってきそう…)

そう、それは諦めと呆れからくるため息だった。
その時…


ザザッ


【ザフト軍に告ぐ!こちらは地球連合軍所属艦、アークエンジェル!】


突然、公式回線で繋がれたチャンネルから、厳しそうな女の人の声が聞こえて来る。

「…何?」

その発進源はどうやら、目の前の足付きから。
不思議に思いながらも聞いていると、信じられない言葉が流れてきたのだった。


【当艦は現在、プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している!】


「はぁぁぁぁ!?」

(ちょっ!! 嘘でしょ! なんでラクス嬢が足付きに!?)

この驚きは、この戦闘区域に存在する人全てと同じだと思う。(地球軍はどうか知らないが)
その証拠に、この通信からもたらされた情報により戦闘は一時休戦状態だった。


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