◆【本編75話:人はそんなものじゃない!!】より
兄様とキラが激しい戦闘を繰り返すシーンから
少年の操るフリーダムが、今までの力が嘘だったかのように素早く兄様の操るプロヴィデンスの懐に入る。
そして、プロヴィデンスのコックピットは、彼の持つビームサーベルに貫かれた。
「たいっ……!!!!」
【あ………ぐっ……!】
「たいちょう……たいちょ………避難して! 早く!」
【アーティ……】
「!!」
苦しそうな吐息の兄様が、必死に私の名前を呼ぶ。
二人の時にしか呼ばないその呼び方に、私の何かが振り切れた。それが合図だったかのように、私は思わず「兄様」と呼んでしまうことなる。
【…アーティ……ぐっ!! ……君だ…が……私の……】
「に……兄様……いいから、そこから退いて!! ジェネシスがぁ!!」
【愛している……アーティ……君だけ……】
「!!」
最期に聴いた兄様の声は今まで聴いたもののどれより優しい。
乱れた通信が映した兄様の顔は、装着していた仮面が外れ、今まで見た顔のなかで一番…
……穏やかだった。
「に…さま…………兄様………いやぁぁぁああ!! 兄様ぁぁぁ───!!!!」
そして兄様の乗るプロヴィデンスはその操縦者を吐き出す事なく兄様ごと大破して、私の絶叫はエターナルのブリッジを反響していった。
……のだけど、なんだか先ほどから通信先で密かな笑い声が聞こえてくる。
とても聞き覚えのある、クセのある美声。
【ハハハハハ……】
私はハッキリ聞こえたその声に、涙をぬぐうこともせずに顔を上げた。
【ハハハハハ! 涙を流さずとも良いアーティ! 私は生きているからな! 無事で!】
「兄様!」
「「えぇぇええぇぇえ!?」」
喜ぶ私とは反対に、キラも、イザークも、ディアッカも。その場に居る全員が驚愕に目を見開いた。
「生きてたんだね兄様! 流石!」
【私は不可能を可能にする男だからな!】
ビシッと断言する兄様の微笑みに、私はうんうん頷いた。
「だよね!! 私もそう思う!」
「って待てぇぇ!! 何だか知らんが隊長がその言葉を使ってはいけない気がします!!」
【ふむ。何故かねイザーク。ムウも同じ台詞を言って果てたじゃないか】
きょとんとする兄様に、イザークはもはや脱力しながら、それでもなお律儀に突っ込みを入れた。
「ムウ・ラ・フラガは果てたじゃないですか。隊長が不死鳥みたいに蘇ってどうするんです」
【ふむ。運命での私の役回りを増やしてもらうとするか】
「シナリオ自体変える気満々!? やめてください!!」
【この際だから死亡組みは一気に蘇ってみたらどうかね! さぁ、立ち上がれ! 出番の少ない哀れなキャラたちよ!】
『うぉぉぉぉおぉ!!』
兄様の言葉で、死亡組みキャストは沸きあがる。
「やめんか馬鹿者ぉぉぉ!!」
この瞬間、初めてイザークが兄様に対してマジ切れしたのだった。
CUT!
(これは革命だよイザーク)
(次章は運命です!! 革命でもなんでもありません! 大人しく死亡してろ!!)
(お、俺は賛成だ!! 革命する! やってやるさ!!)
(その意気だシン・アスカ。キラに主人公をかっさらわれる哀れなキャラ代表よ)
(はいっ! クルーゼさん! 俺、やります!)
(だから、自重しろといっているだろうが!!)
(イザークが言うなよ)
(イザークが言っちゃ駄目ですよ)
(イザーク、ソレお前が言うかー?)
(イザーク、お前、耳イタくないの?)
(イザーク……キミ、ちょっと反省してきなよ)
(貴様ら覚えてろよ!!)
同期全員(死亡組み含む)による総突っ込みでイザークマジ泣き