特別章 NG集
11章73話 NG「俺の辞書から自重が消えた」
◆【本編73話:約束だ。絶対に生き残れ】より
イザークがアーティに密かな嫉妬心を見せるシーンから


「……イザーク?」
「アルト」
「はいっ」

ギロッとにらんでくるイザーク。彼の顔をのぞきこんでいた私はビクッとして姿勢を正した。

「…他の男からは、もらうなよ」
「へ? えと……兄様も男なんだけど」
「兄上殿は別だ! 仕方ないから許してやる!」

(なんで、キミに許しを得ないといけないの……)

「あの、イザークさん?」
「お前は、俺が守ってやる」
「……キミの隊、確か後方に回ってた気がするんだけど…? 私、出るの前線だよ?」
「隊は後方でも、俺は前線に行く」

『それは、どうなの…』と、言おうとして、私は言えなかった。
ぎゅっとイザークに正面から抱きしめられたから。

「いざっ…」
「生き残れ」

私を抱きしめる力が少し強くなる。

「…………!」

私は彼の言葉に返答できないでいた。

「約束だ。絶対に生き残れ」

返答しない私に、イザークはなおも強く言う。
そしてイザークは、私の後頭部に手を回して固定すると、ぎゅっと体をさらに寄せて唇を重ねた。

「んっ!」
「アーティ……」
「んっ……イザっ…ちょっ…」

一度離れた唇は、また降り注ぐ。私はイザークを押しのけようとして腕に力を込めるけど、拘束する力は緩まない。

「は…なして! 何してんのキミは!」
「みんな好き勝手やるから悔しくなっただけだ」
「そういうのは収録終わってからにしてって!」
「いいのか?」
「へ?」

カメラが回っていて、ばっちりキスシーンを撮られたことに恥ずかしすぎて怒鳴る。
だけどイザークは真剣な目をして私に問いかけてきた。ついでに言うと今尚、抱きしめる腕の力は弱まらない。

「収録が終わったら、朝まで……」
「はいはいはいはい。続きはこの収録終わってからねー」
「ラスティ!」

私はベリッとイザークから引き離された。
ちなみにイザークはディアッカに背後から羽交い絞めにされている。

「ディアッカ貴様ぁ! 裏切るのか!!」
「最近、アルトと絡む収録なくてアルト欠乏症なのはわかってるけど、収録終わってからにしろよな」
「え、マジ?」

アルト欠乏症になっているという事実をきかされて、私は不謹慎だがちょっと嬉しくなってしまった。普段はそんなそぶり見せたこともないから。

「う、うるさい!」
「イザークも我慢がきかなかったんだよねー。一回イチャつかせてからと思ったけど見るに耐えないし、バカップルの毒気に当てられた独身スタッフがそこらでゴロゴロしてるから、そろそろ止めとこうと思って」

ラスティがちらりと背後を振り返る。私もその視線を追って背後を見ると、確かに悔しそうに何かを呻き、頭を抱えながらゴロゴロするスタッフが大勢いた。

(…うわぁ…壮絶な光景…)

その光景にげんなりしていると、ディアッカがイザークの拘束を解いてグッジョブサインを出している。

「というわけだ。サクッとOKだしちゃえよイザーク」
「それで収録さっさと終えて、アルトと一緒にGO TO BEDだ!」
「ああ、そうする」
「即答すんな!! ラスティも!! 無駄に良い発音でなんて事言うの!」

私の顔は真っ赤すぎて、もはや完熟トマトにも負けない勢いだ。

「さあ、アーティ仕切りなおしだ。さっさと終わらせて家に帰るぞ」
「無駄に爽やかな笑顔やめて!! くっそ! イザーク、カッコいい!!」

それでも嫌いになれない私は、やっぱり美人に弱いということを改めて自覚することになる。


CUT!

(本当にイザーク…一発OKで即帰宅したな)
(アルト…明日はMS撮りなのに可哀相に…足腰立つのかなぁ?)
(アルトの事が大事なイザークだからな。そこまではしないんじゃね? 明日辛いし)
(お、賭けるかディアッカ。イザークは欲望に負けるに、俺は5ね)
(なら、自重するに4だな)
(アルトが拒絶して、さらにイザークの鬱憤がたまるに10)
((アスラン!?))
(明日、現場は荒れるぞ。断言しても良い)
((マジで……))


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