◆【本編69話:俺は結構本気だが?】より
イザークとディアッカがにらみ合いをしている最中に出会うシーンから
【…アスランから、ちょっとは事情聞いたぜ。見事に背中に蹴りを食らったってな】
「うん。思いっきり蹴った。でも、殴り足りないから今度あのデコに会ったらボコるってイザークと落ち着いた」
私はヴェサリウスの食堂でイザークと交わした約束をディアッカに伝えた。すると彼は通信先でぶふっと吹き出し、笑い出す。
【くっ…で……デコ……くっ……!】
「デコじゃん? あの見事なデコっぱちは、最高だね。コンテストあったら優勝するんじゃないかな」
【あるかよ……くっ……そんな……大会……】
「あったら、だよ」
爆笑を必死でこらえるディアッカに私は淡々と告げる。しかしそのやりとりに一番苛立ちを覚えていたのは他ならぬイザークだった。
【き、さ、ま、らぁ〜〜〜!! いい加減に…】
【デコっていうなぁぁあああ!!】
ドゴォォン!!!
「え」
イザークが通信先でキレるというシナリオなのだが、何故かディアッカの乗るバスターが被弾している。
ついでにアスランの声が聞こえた気がした。
【なんだっ!?】
「さぁ……なんか、アスランの声がしたような…」
【なんだと!?】
「気のせいかな……とりあえずイザーク、本当に撃っちゃだめだよ」
イザークがバスターを勢いあまって攻撃したんだと思って、私は軽くいさめる。すると、通信先のイザークは眉根を寄せて否定してきた。
【そんな事はしてない。俺が台詞を全て言い終える前にディアッカの奴が勝手に…】
【か、勝手にじゃない…】
「【ディアッカ!?】」
かろうじて生き延びたディアッカが、ヘロヘロの様子で通信をつないできた。
「勝手にじゃないって…じゃあ誰がキミを…」
ピピピピ
「ん?」
エクリプスのレーダーが反応する。その反応している機体名を見て、私は絶句した。
【どうしたアーティ!】
「えと……今の……アスラン……かな?」
【何だと!? どういうことだ】
「いや、レーダーにね……ジャスティスが…映ってるんだけどさ……」
私はレーダーから目が離せない。というか、驚きすぎて固まってしまったという方が正しいか。
(…なんでジャスティスがミーティア装備してんの…?)確かミーティア装備は次の収録のはずなのだが、アスランの乗るジャスティスにはミーティア装備済みとなっている。
【なんだ、ハッキリ言え!】
「さっきの攻撃は…」
【俺だ!! みんなして俺をハゲだのデコだの……俺のコレはデフォルトだぁぁ!!】
「うわっ! アスラン!!」
イザークとの通信に割り込んできたのは、怒り心頭のアスラン。ついでに種割れまでしていてちょっと怖い。
「あああアスラン! おちついて!」
【悪かったって! でも、アレ、台詞なんだからしょうがないだろ!】
【台詞に盛り込まれるぐらい貴様のデコが微妙なんだろうが! いちいち怒るな!】
私が一生懸命アスランの怒りを納めようとしているのに、ディアッカはともかくイザークは怒りをあおるだけじゃないかと思うような発言をする。
「イザークちょっと黙って!」
私がこれ以上余計なことを言われないようにイザークに注意を促すけれど、彼は止まらない。
いや、正確には止まらせてもらえなかった。
【なんだって!? じゃあイザークは銀河童とかオカッパとかマザコンとか言われ続けても、それが台詞だから仕方ないと割り切れるのか!?】
【誰が河童だ!! マザコンでもない!!】
【はっ! ほら見てみろ! 言われたら気分が悪いだろ!! 俺だって同じだ!】
(今、鼻で笑いませんでしたかアスランさん! 本気でキレてますね!?)私は普段冷静なアスランが人を小馬鹿にするイザークのような態度をとっていることで、本気で苛立っていることに気がついた。そして何とかその怒りを沈下させようと勤める。
「と、とりあえずさ……収録あるし。アスランもミーティアをエターナルにパージしておいでよ。それのお披露目、明日じゃん。明日使用するのに使えなくなったんじゃ意味が…」
【そんなの平気だ! これはアルトのエクリプスに装備するミーティアだから!】
「ああ、そうなんだ。じゃあ安心だね……って!! 自信満々に言うなデコ!! 撮影に使わないからって何してくれてんのよ!!」
【だってみんなして俺のことデコデコって!! いい加減、俺にだって我慢の限界があるんだぞ!】
「だからって何してもいいわけ!? まず、NGシーンを出すな!! ついでに私のミーティア返せバカー!!」
そうして私はジャスティスを捕捉し、ロックをかける。
【ちょっ、アルト。マジやめろって!】
【アーティ!! 手伝うぞ!】
「今日こそ堕とす!! 一回、沈め! ハゲラン・ズラ!!」
【はっ! 俺が堕とされるもんか! やれるものなら、やってみろ!】
「言ったわね!」
【アスラァァァン!!】
そうして私とイザークは、ジャスティスに乗ったアスランを追いかけたり、追いかけられたりしながらしばらく過ごした。
CUT!
(アイツら、どうにかなんねぇのか…なんであんなに導火線短いんだよ)
(アスラン、小さい頃から前髪は気をつかってたから…)
(あぁ、だからか……って、キラ……アスランがああなるってわかってるんだったら、止めろよ)
(無理だよ。僕だってアスランがああなったら止められないもん)
(あぁ……また収録が伸びる…)