◆【本編54話:貴方が殺しましたか?】より
コンサートホールでラクスを発見し、彼女の元に行くシーンから。
「まいどっまいどっ! ラ〜ク〜ス〜!」
その声に、彼女が反応してハロの方を見る。その時、歌も中断され、会場内には一瞬の静けさが戻った。
「あら、ピンクちゃん! …やはり、貴方が連れてきてくださいましたわね…ありがとうございます」
今まで悩んでいるような表情だったアスランの顔が、ぐっと引き締められて、ラクスを睨みあげた。
「ラクス…」
「はい?」
ラクスは平然とアスランの睨みを受け流す。
彼女は相変わらず、天然なのか計算なのかわからない表情をしていた。
「アスラン!?」
アスランは急に走り出してラクスのいる舞台へと跳んだ。私も慌てて彼に続く……はずだったのだが、その足を急停止せざるを得ない事態になってしまった。
ずるっ ごすっ!!
「いてっ」
アスランが格好よく跳躍するシーンだというのに、靴が脱げてバランスをくずし、利き手を突こうとして、盛大にこけた。
見事にずるっと。
「……ぶっ」
笑いをこらえきれず、私は口元に手をやってみたが、漏れ出た声は拾えない。
「あ……あす……ぶっ…くっ……あすら……だいじょ……くっ……」
「………笑うか気遣うか、どっちかにしてくれ…」
「くくっ……うん……」
そうして私は大爆笑した。華麗にずっこけたアスランを指差して。
「……アルト、俺がそう寛容だと思うなよ……」
ふるふると拳を握り締めながら起き上がるアスラン。
少しばかりデコが赤くなってるあたり、顔面からいったらしい。さらに笑える。
「あっはっはっは! だ、だっ……って……くっ……あっはっはっはっは! だめ、しんじゃうー!」
「アルト!!」
お腹を抱えて笑う私に、アスランは力いっぱい叫んだ。私の声はホール内で、盛大に反響していた。
「あらあら、アスラン……NGキングに輝くおつもりですか?」
舞台の上でラクスはちょこんと座り、アスランを見下ろしている。
その微笑みは、私には嘲笑にしか見えなかった。
「NGキング!! いいね!! ラクスに座布団一枚!!」
「あら、ありがとうございます」
「盛り上がるな!!」
CUT!
(靴が脱げて転ぶとか、いつの時代のコント!?)
(今度からオーダーにする…)
(苦労賞!)
(字が違う!! そんな賞はいらないから!)