◆【本編42話:わかっている、そんな事ぉ!!】より
ニコルの死に母艦へ帰ってきたメンバーで口論を始めるシーンから。
ディアッカがタイミングを見計らって声をかけると、我慢仕切れなくなったのか、イザークはようやく他の言葉を言う気になったらしい。
「何故、アイツが死ななければならない!? こんな所で……ええ!?」
(…そこでアスランに言っちゃうんだ…)イザークは皆に向かって言っているつもりだろうけれど、視線は完全にアスランに向けられている。そんなアスランは我慢の限界に達したのか、イザークの胸ぐらをつかんでロッカーに押し当てた。
「言いたきゃ、言えばいいだろう!! 俺のせいだと……俺を助けようとしたせいで死んだと!!」
「アスラン!!」
イザークはアスランの手を振り払おうとして、手をつかんだけれど、何かを堪えるようにしてその手を離した。
(……イザークが……泣いてる……)悔し涙だろうが、彼が泣いている場面など初めて見た。…私はそのまま事のなりゆきを見守っていようと思ったんだけれど…どうしても我慢しきれなくて、アスランの肩をそっと叩く。
「……アスラン……イザーク泣かしたね?」
「ひっ!! アルト!?」
アスランはびくっと肩を震わせて勢い良く私を振り返る。その顔面には冷や汗が大量に流れていた。
「いざーく、なかした、ね?」
一言ずつ言葉を区切って、ゆっくり発音する。それは、私の処刑タイム始まりのカウントダウンだ。
「あああああのっ、これ、芝居……」
「もんどう、むよう!!」
そうしてアスランにパンチを繰り出すと、必死な形相のアスランは私が拘束している肩の手を振り払って避けた。
「避けるな!」
「避けるよ!!」
さらに私がアスランに殴りかかろうとすると、背後からぎゅっと抱きしめられ、振り上げた腕をとられる。
「アーティ、落ち着けっ! 目薬だ!!」
「……目薬?」
「俺が泣くか馬鹿! どうしても涙が出ず、仕方なしに目薬を…」
その言葉をすべて言い終える前に、イザークの視線がカメラの先で固定された。不自然な静止だ。
「イザーク?」
私は不思議に思ってイザークの視線を追っていくと、カメラの後ろには神々しいスマイルを浮かべたニコルが立っていた。
「僕の死に涙も出ないですか。そうですか。僕は悲しいですよイザーク」
「すすすすすんませんっした! ニコルさん!!」
「いいえ、構いませんよ。僕は気にしていませんから。本当に…ね」
「今すぐ涙を流出します!!」
「そうですね、頑張れそうですかイザーク。お手伝いしましょうか?」
「結構です!!!」
CUT!
(結局、マジ泣きだな。アレ)
(流石の私も、ニコルに手はあげられないなぁ…)
(お前も恐怖感じたワケ?)
(違うよ。私、可愛い子と美人に弱いの)
(あ、そ…)