◆【本編21話:お茶は私が入れますわ】より
ラクスの部屋に食事を持っていったアーティと、部屋から退出しようとするアスランのシーンから。
「えっと……お食事をお持ちした…んですけど、お邪魔……でした?」
「いいえ、わざわざご苦労様です」
「……自分はこれで失礼します」
アスランは短くそう言うと、難しい顔をしてラクス嬢に背を向けた。私と入れ替わりで部屋を出ていくアスランの背中に、ラクス嬢は声をかける。
「…辛そうなお顔ばかりですのね…この頃の貴方は…」
「…ニコニコ笑って戦争はできませんよ……………痛っ!」
ゴンッ!
シュンっと部屋のドアが閉まり、アスランの姿が見えなくなる……はずだったのに、ドアは閉まらなかった。というか、開きもしない。
アスランはこちらを少しだけ振り返りながらラクスに向かって台詞を言う…というシーンだったから、そのまま出て行こうとして開いてもいない自動ドアでデコをしたたかに打ち付けていた。
(…おかしいな、さっきは普通に開いたよ…?)不思議に思ってよく見ると、部屋のロックが普通にかかっている。ランプが赤になっているから。
「…何でロックかかってんの?」
「あらあら、大丈夫ですの? アスラン」
ラクスは少しだけ驚いたような顔をしてアスランの傍まで寄った。
「ドアが……」
「ちょっ、そこで何で私を見るかな。両手ふさがってんのに、ロックなんてかけないよ! 私、そこまで意地悪じゃな…」
「ハロハロ! アスラン! ミトメタクナーイ!!」
私の言葉をさえぎって、二人の周りをコロコロ転がっていたハロが飛び跳ねる。
「…………」
「……まさか…?」
私は嫌な予感がしてハロを凝視していたが、アスランもその視線に気づいてハロを手に取ろうとする。
すると、ハロはひょいっとアスランの手をすり抜けラクスの手に収まった。
「まぁ、めっ! ですよ、ピンクちゃん」
「はろはろ〜。らーくーすー」
「本当にいたずら好きですわね…」
「って、事はやっぱりハロがロックしたの!?」
「そのようですわね」
ラクスの言葉を受けて、私はアスランにそっと視線をやった。
「……今度……いや、今すぐハロの機能を変更します。渡してくださいラクス」
「いやですわ」
ラクスは真顔で即答した。
CUT!
(だって、そちらの方が面白いのですもの)
(テイク2してもハロの面白さを優先させちゃうんだ…)
(これで私もNG仲間に入れてもらえますか?)
(うん………もぉ、バッチ来い…)